コールドチェーン物流と食品安全の会議、北京で開催

(中国)

北京発

2021年07月28日

中国出入境検験検疫協会と北京交通大学、APEC基準・適合性小委員会などによる会議が7月25日に北京で開催され、冷凍食品物流の安全確保などをテーマに議論した。中国内では、2020年6月に北京の卸売市場で新型コロナウイルスのクラスターが見つかって以来、コールドチェーン物流面の新型コロナウイルス対策が注目されている。

会議では、国家市場監督管理総局(SAMR)中国標準化研究院農業食品所農業室の席興軍主任が、食品コールドチェーン標準体系とAPEC国際標準協力をテーマに報告し、食品コールドチェーン物流衛生規範(GB-31605-2020)をはじめとする標準が中国では設けられていることや、国際的には日本が起草に関わったISO/TC315やISO23412:2020などが存在し、米国やドイツなど各国でもそれぞれ国内規格があることを紹介し、APEC各国がISOのような機関の下で協力しコールドチェーンに関する国際規格制定に向け協力する意義を強調した。

中国科学院理化技術研究所の田長青研究員は、欧米や南米、南アジアなどから輸入する冷凍食品の表面から新型コロナウイルスが検出されており、食品パッケージの表面を消毒する意義はあるが、化学消毒剤による従来の消毒では時間が掛かり、その効果も不透明で、残留薬品の食品への影響も懸念されるなどの問題があり、オゾンや紫外線、閃光パルス殺菌、プラズマ殺菌などの方法を試行・研究していることなどを紹介した。

会議ではこのほか、ブロックチェーン技術で食品の流通・取り扱い記録を管理し、人工知能(AI)技術で不適切な食品取り扱いを監視する技術研究や、2022年の北京冬季五輪のコールドチェーン物流についての研究報告があった。また、世界銀行の曹文道博士は、農業者が食品安全を確保するための資金確保を補完するプロジェクトについて紹介するなど、多岐にわたるテーマの発表があった。

中国日本商会が中国の中央・地方政府との対話促進を目的として発行している「中国経済と日本企業2021年白書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」物流パートでは、冷蔵・冷凍輸入品の輸入取り扱いの際に地方政府が新型コロナウイルス対策のために個別規制を設け、その対応に苦慮したことが指摘されており、コールドチェーン物流の安全性確保のための標準作りに向けた動きは今後も注目される。

(草場歩)

(中国)

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