大統領が液化石油ガス価格抑制に向け国営販売会社の設立計画を発表

(メキシコ)

メキシコ発

2021年07月09日

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は7月7日の早朝記者会見において、国営の液化石油ガス(LPG)販売会社を設立する意向を明らかにした。大統領はガソリンや電力などのエネルギー価格をインフレ率以下に抑えることを公約にしているが、LPGについてはインフレ率以上に価格が上昇している現状を受け、石油公社PEMEXの子会社として国営販売会社を設立し、家庭向けに安価なLPGを提供することで競争を促進し、販売価格を抑制することが狙いだ。国立統計地理情報院(INEGI)が発表する平均価格のデータによると、2021年6月時点の家庭用LPGの販売価格は、AMLO政権が発足した2018年12月比で36.0%も上昇しており、同期間のインフレ率9.7%を大きく上回っている。

同発表に対し、民間部門からは懸念の声が上がっている。新規参入事業者が増えて競争が促進されるのはよいが、国営企業としての社会的立場から市場価格よりも極端に低い価格を設定された場合、民間事業者にとっては事業の継続性が失われると懸念する。他方、連邦経済競争委員会(COFECE)は7月7日付でプレスリリースを出し、連邦政府の懸念は共有するものの、現政権は、2017年のLPGの販売価格自由化以降にCOFECEが繰り返し提言してきた内容を今まで実行に移さなかったことが、現在の市場競争が不足する状況を招いたとしている。COFECEは、一連の規制緩和を通じてスーパーマーケットなどの場所でLPGのボンベを販売できるようにすること、家庭がより安価な天然ガスの購入に切り替えるようなインセンティブを導入することなどを提案しており、国営企業による供給体制には反対している。

燃料の輸入では民間事業者に不利な規制を導入、米国商工会議所が問題視

在メキシコ米国商工会議所(AmCham)は7月5日付でプレスリリースを出し、2021年6月11日付官報で公布された、2020年度の貿易に関する一般規則(RGCE2020)の第7次改正に基づく第2.4.1則の改正(翌12日に発効)に懸念を表明した。同改正は、燃料などの石油精製品や特定の化学品を指定された税関以外で輸入通関するための許認可と同更新を、今後は国営企業であるPEMEXと電力庁(CFE)のみに与えるという内容だ。税関法第10条および施行規則などに基づき、燃料の輸入は国内27税関でのみ認められているが、今までは国税庁(SAT)に対して申請を行い、3年間の許認可を得ることにより、指定税関以外の港湾ターミナルなどで輸入通関を行うことができた。しかし、今後はこの許認可が国営企業以外は得られなくなるため、多額の投資を行い港湾に専用ターミナルを建設した民間事業者であっても、指定税関の通関レーンまでタンクローリーなどで運搬しなければ、通関ができなくなる。多方、PEMEXは港湾にある専用ターミナル内で輸入通関できるため、民間事業者とPEMEXの間で不平等な条件になっており、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が定める内国民待遇などに反する内容だとAmChamは批判する。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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