新年度予算が成立、前年度比18%増

(エチオピア)

アディスアベバ発

2021年07月14日

エチオピア人民代表議会(下院)は7月5日、新会計年度(2021年7月8日~2022年7月7日)の予算案を可決した。当初予算は5,616億7,300万ブル(約1兆4042億円、1ブル=約2.5円)で、前年度の当初予算から18.0%増となった(添付資料表参照)。

歳出では、例年、地方交付金(2,040億ブル、36.3%)が占める割合が高い。同じく地方に交付する「持続可能な開発目標(SDGs)達成のための支出」(120億ブル、2.1%)は前年度から倍増した。海外債務返済の伸び(47.9%増)からは、政府の財政健全化に向けた意思もみられる。

省庁別(注)では、都市開発・建設省が予算全体の14.9%(経常支出14億ブル、資本支出825億ブル)の配分を受け、引き続きインフラ開発が経済成長を下支えしていくと見込まれる。政府が注力する教育(教育省と科学技術・高等教育省)も2桁を占める(13.9%、経常支出379億ブル、資本支出281億ブル)。これに続くのが国防省(4.6%、前年度比33.3%増)となっており、国家的災害リスク管理委員会に支出計上される支援物資の物流管理も前年比で大きく伸びた。これらはティグライ州紛争に対処する駐留経費や、人道支援の配送手配などにひもづく支出とみられる。そのティグライ州には、地方交付金の5.9%、持続的開発目標達成のための支出の6.0%を計上しているが、州都メケレから国防軍と暫定行政府が撤退し、政府が認める行政主体が不在のため、同州向けの予算が執行できるかは不透明だ。

歳入をみると、税収(59.5%)を含めた国内歳入は全体の65.7%にとどまる。当地の報道によると、税収増加に向け、新会計年度中の付加価値税の対象見直しや関税の見直しなどが検討されている。歳入の不足分を補うのは、国内借り入れ(12.3%)、海外からの贈与(11.9%)、海外借款・信用供与(10.1%)だ。エチオピアでは中国の存在感が大きいものの、海外からの贈与で8.3%を占める2国間贈与では、英国(49.5%)と米国(30.9%)が8割を占め、中国は0.3%にすぎない。他方、海外借款・信用供与で15.9%を占める2国間借款・信用供与では、中国が8割(中国輸出入銀行分を含めて85.5%)を超え、借款・信用供与を重視する中国の姿勢がみてとれる。しかし、贈与も借款・信用供与も世界銀行グループやEU、国際協調の枠組みで設けられた基金など、多国籍・国際機関からの支援が中国の支援を上回っている。

(注)便宜上、省庁別と称している。予算上の取りまとめは部門ごとで、複数の省庁をまたぐ項目や省庁名と結びつかないものがあり、厳密な意味での省庁別ではない。

(関隆夫)

(エチオピア)

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