政府、国産の医療機器使用を推進

(インドネシア)

ジャカルタ発

2021年07月08日

インドネシア工業省は6月15日付共同プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、政府が国内の医療機器産業の発展加速を推進することにコミットすると発表した。政府は国産の医療機器の利用促進を図る措置を導入している。同プレスリリースによると、国内では358種類の医療機器が生産されており、そのうち、心電図や整形外科用インプラント、ネブライザー、酸素計など79種類の医療機器(添付資料表参照)が輸入品に代替可能だ。これらの中には、現地調達率(TKDN)が40%を超えているため今後、輸入品の購入が禁じられるものもある。

ルフット・パンジャイタン海洋・投資調整相は15日の記者会見で「Eカタログ(政府調達のオンライン購入ツール)での医療機器の発注数は、今のところ、国産品2兆9,000億に対し、輸入品はその5倍の12兆5,000億」と、輸入品が多い状況を指摘した。政府調達庁(LKPP)によると、2020年5月1日から2021年6月11日までの間、Eカタログに載った国産の医療機器の数は8,219製品で、総取引額は2兆9,000億ルピア(約232億円、1ルピア=約0.008円)、外国産の医療機器は3万9,692製品で総取引額は12兆5,000億ルピアだった。

政府は国産医療機器の市場での可用性を高める7つの戦略的ステップとして、(1)商品またはサービスへの政府支出を通じて国産品を奨励、(2)国内での医療機器生産能力の増強、(3)国家経済復興プログラム(PEN)基金からの現地調達率(TKDN)認証への補助金、(4)医療機器や医薬品への投資家向けインセンティブ制度、(5)研究ベースでのハイテク医療機器の品質向上、(6)輸入品の購入に関するデッドラインポリシー、(7)Eカタログでの国産品の優先表示の実施を挙げた。

今回の発表に先立ち、保健省は6月3日付の医療サービス総局長回章(添付資料2参照)で、国内の公立病院に対し、国産の医療機器を優先的に調達すること、調達の状況を四半期ごとに保健省に報告することを義務付けていた。今回の発表で、政府調達庁(LKPP)は医療機器の政府調達に関し、「国産医療機器と輸入品の両方のカタログを準備し、国産の医療機器で十分まかなえない場合に限り、輸入品の電子購入を発注するマンデートを与えるカタログ契約条項を医療機器サプライヤーとの契約に盛り込んでいる」という。また、Eカタログから製品を発注する際の最初の表示画面には、TKDN値を有する国産品が常に優先されるとした。

日系企業からは国産化促進に懸念の声も

これまでも、中央省庁や州政府などの政府関係機関が物品を調達する場合、国産品を使用しなければならないことが政令2018年第29号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの第57条に明記されていたことから、今回の政府発表は、国産の医療機器使用を促進するための具体策を定めたものとみられる。しかし、現場では、Eカタログに登録した輸入品の医療機器の購入が突如できなくなったこともあり、今回の措置に唐突感を感じている企業もある。

日系企業からは、インドネシアで販売する医療機器の多くが輸入品であり、公立病院に販売できない状態が続けば、売り上げが大きく落ち込み、経営状況に影響を与えかねないと懸念する声も出ている。上記の7つの戦略的ステップが今後どのように進められるのか、具体的なことは現時点で不明で、保健省や政府調達庁など当局の動向に注目する必要がある。

(中沢稔、佐々木新平)

(インドネシア)

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