新型コロナ・デルタ型変異株への対処、連邦・州・市・学術界で差異
(ブラジル)
サンパウロ発
2021年07月26日
ブラジル政府系紙「アジェンシア・ブラジル」は7月19日付で、これまでに国内で110人が新型コロナウイルスのデルタ型変異株に感染したと報じた。同変異株については、マルセロ・ケイロガ保健相が15日付のCNNブラジルのインタビューで「現在進めている新型コロナワクチン接種を加速させる。デルタ型変異株については、順次感染者を特定し、隔離するべく対応する」と述べている。また保健相は、複数の州知事がワクチンの2回目接種を前倒しすることで同変異株に対処しようとする動きに触れ、「専門家の意見を踏まえて慎重に検討すべき」と説明している。8日付「ネイチャー」誌では、米国ファイザー製や英国アストラゼネカ製のワクチンの1回接種だけでは、デルタ型変異株がほとんど抑制されなかったと報告されたが、これを受けて2回目の接種を急ぐ動きが幾つかの州でみられたため、保健相の発言はこうした動きを牽制したものとみられる。
例えば、リオ・グランデ・ド・スル州政府は7月8日に公式サイトで、ファイザーやアストラゼネカのワクチンの1回目と2回目の接種期間を12週間から10週間に短縮することを発表した(注)。また、リオ・デ・ジャネイロ州も7月13日付の公式サイトで、アストラゼネカ製ワクチンの接種間隔を12週間から8週間に短縮すると発表した。その一方で、州都リオ・デ・ジャネイロ市のダニエル・ソランス保健局長は同日付の現地紙「グローボ」のインタビューで「リオ・デ・ジャネイロ市では保健省の推奨に沿って行っている。アストラゼネカのワクチンは接種間隔が12週間以上の場合には有効性は80%だが、1回目と2回目の間隔を8週間に短縮すると有効性は59%に低下するため、接種間隔の短縮により有効性が低下することを懸念している。現状では州の決定に従わない」と述べている。
こうした中、ブラジル免疫学会(SBIM)は7月13日付の公式サイトで、ブラジル小児学会(SBP)とともに、新型コロナワクチンの在庫数を考慮し、かつ1回目のワクチン接種だけでも重症化を防ぐ効果が得られたとのカナダのデータなどを引用し、より多くの人が1回目の接種を行うことがブラジルにとって全体最適だと説明している。デルタ型変異株については現状、連邦政府、州、市、学術界の考え方や対応方法に差異がある。
(注)ブラジル保健省は5月14日付の公式サイトで、米国ファイザー製ワクチンの接種間隔を12週間とすることを推奨している。
(古木勇生)
(ブラジル)
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