ガスプロム本社がサンクトペテルブルクに移転

(ロシア)

サンクトペテルブルク発

2021年07月07日

ロシア国有ガス会社のガスプロムは、本社を首都モスクワからサンクトペテルブルクに移転する。6月25日の株主総会で決議された。

写真 ガスプロム本社が入居予定のサンクトペテルブルク市内の高層ビル(ジェトロ撮影)

ガスプロム本社が入居予定のサンクトペテルブルク市内の高層ビル(ジェトロ撮影)

現時点で、具体的な移転時期は明らかになっていない。移転の背景には、モスクワへの経済一極集中の是正を図りたい連邦政府や経済成長の足掛かりとしてガスプロムグループの誘致を目指すサンクトペテルブルク市政府の思惑があるほか、アレクセイ・ミレル社長の出身地という点が関係している(「ベドモスチ」紙2014年2月13日)。既に、一部の子会社が同市に拠点を移している。

世界最大級のエネルギー会社の決定に、サンクトペテルブルク市政府関係者は歓喜の声を上げている。アレクサンドル・ベグロフ市長は、ガスプロム本社の移転による税収拡大や雇用創出といった経済効果に期待を示している(サンクトペテルブルク市政府6月25日)。このうち、税収効果について地元紙「フォンタンカ」(6月10日)は、最大で1,500億~2,000億ルーブル(約2,250億~3,000億円、1ルーブル=約1.5円)に上ると試算している。

一方、経済効果は限定的とみる専門家もいる。モスクワ国立大学地理学部のナタリヤ・ズバレビチ教授は「移転済みの子会社を通じて、既に相当の税収がサンクトペテルブルク市にもたらされており、本社移転そのものによる税収効果は軽微だ」と指摘。高等経済学院地域調査都市計画研究所のイリーナ・イリイナ所長も「既に本社採用職員の一定数がサンクトペテルブルクに赴任しているため、職員の転勤に伴う関連消費はそれほど大きくはならない」と述べた(経済紙「RBC」6月25日)。

(一瀬友太)

(ロシア)

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