欧州中銀、政策金利の指針更新、低金利の継続示唆

(EU、ユーロ圏)

デュッセルドルフ発

2021年07月26日

欧州中央銀行(ECB)は7月22日、ドイツ・フランクフルトで開催した政策理事会後の記者会見で、金融政策戦略の見直しの結果(2021年7月12日記事参照)と、インフレ率が目標の「中期的に2%」を下回って今後も同様との見通しを受け、将来の政策金利の指針フォワードガイダンスを更新したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。また、現状の金融緩和政策は引き続き維持する方針を示した。

政策理事会は、予測期間(現在:2021年~2023年)中にインフレ目標2%を達成したとしても、期末以降も中期的にインフレ率が2%に安定すると判断するまでは、政策金利は現在またはそれ以下にとどまるとの見方を示した。また、インフレ率が目標の2%を一時的に超えて推移することも容認した。6月のインフレ率が1.9%と目標に近づいた一方、クリスティーヌ・ラガルドECB総裁は記者会見で、現在のインフレ率上昇は一時的なもので、中期的にはインフレ目標を下回った状態が続く見込みとした。なお、これまでと同様、政策金利(主要リファイナンス・オペ金利)を0.00%、限界貸付ファシリティー金利(オーバーナイト貸し出し、翌日返済)を0.25%、預金ファシリティー金利をマイナス0.50%にそれぞれ据え置いた。

また、ユーロシステムによる債券・国債の購入プログラム(APP:asset purchase programme)での毎月200億ユーロ規模の購入を継続する。これまでと同様、緩和政策の効果を高めるため、資産購入については、主要政策金利の引き上げ開始前まで必要な限り継続し、APPの下で購入し保有する債券・国債の再投資については、主要政策金利の引き上げ開始以降も必要な限り続ける方針をあらためて示した。

新型コロナウイルス感染拡大の緊急対策として打ち出した資産購入プログラム「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」もこれまでの方針を維持するとした。1兆8,500億ユーロの規模で少なくとも2022年3月末まで、あるいは政策理事会が新型コロナ危機が収束したと判断するまで継続する。また、現在の資金調達環境とインフレ見通しを踏まえ、政策理事会はPEPPでの資産購入は2021年第3四半期(7~9月)には、2021年の最初の数カ月間よりも高いペースで継続されるとの見方を示した。

ラガルド総裁は記者会見で、ユーロ圏経済の見通しについて「経済が力強く回復しており、2022年第1四半期(1~3月)には経済活動が新型コロナウイルスによる危機前の水準に戻ると予測している」とした一方、「新型コロナ禍」、特にデルタ型変異株が不確実性を高める原因となり、引き続き経済に影を落としていると懸念を示した。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

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