欧州中銀、戦略見直しでインフレ目標を2%に、短期的な上振れ容認

(EU、ユーロ圏)

デュッセルドルフ発

2021年07月12日

欧州中央銀行(ECB)は7月8日、2020年1月23日から行っていた金融政策戦略の見直しの結果を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。今回の見直しは2003年以来18年ぶりとなる。前回の見直し以降、ユーロ圏経済や世界経済に大きな構造的変化が起きており、新たな金融政策戦略が必要となっていた。

クリスティーヌ・ラガルド総裁は記者会見で「ECB政策理事会は、物価の安定は中期的に2%のインフレ目標を目指すことで最もよく保たれると考えている」とし、物価安定の目標をより明確にし、物価安定の維持に必須なインフレ期待を固定させるため、目標の表現をこれまでの「2%未満でかつそれに近い水準」から「2%」に修正した。ラガルド総裁は記者会見の質疑応答で、これまでの目標と異なり2%を常に上限とするのではなく、一時的であれば上振れも容認するなど、目標達成への強い意志を示した。

また、ECBの政策金利決定は引き続き主な政策手段として重要だと確認したほか、フォワードガイダンスや資産購入、長期資金供給オペレーション(longer-term refinancing operations)も不可欠なもので、必要に応じて今後も活用するとした。

政策理事会は物価安定の評価に消費者物価指数(HICP、注)が最適な尺度だと確認した一方、家計に関するインフレをよりよく表すには持ち家に居住している場合のコストを含めた方がよいとした。他方で、同コストをHICPに含むには数年かかるため、それまでは金融政策評価で持ち家住宅費用の推定値を含めたインフレ指標を用いる方針を示した。

さらに、ECBは同日、野心的な気候変動対策関連の行動計画を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。行動計画では、金融政策の枠組みに気候変動への配慮をさらに組み込むことや、気候変動を考慮したマクロ経済モデル、統計、金融政策の分析能力を拡大すること、金融政策運営に気候変動への配慮を含めることなどを掲げ、ロードマップも策定した。

新戦略を適用する最初の金融政策理事会は7月22日に開催される。また、政策理事会は金融政策の妥当性を定期的に評価するとし、次回の戦略見直しは2025年に行う予定とした。

(注)EUにおける統一的な基準による消費者物価指数。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(EU、ユーロ圏)

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