米財務省と議会予算局、早期デフォルトの恐れに債務上限問題の対応を議会に促す

(米国)

ニューヨーク発

2021年07月26日

米国議会予算局(CBO)は7月21日、8月から復活する連邦政府の債務上限額に関して、議会がその再停止や引き上げといった対応を取らなければ、10月または11月にも政府の資金が枯渇する可能性があると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。米国債が債務不履行(デフォルト)となれば、影響は金融市場へも波及し得ることから、議会に早期の対応を促したかたちだ。

政府の発行する国債の発行上限は歳出関連法によって決められているが、2019年8月に法定上限額の適用を2021年7月31日までの2年間停止することが決定され(2019年8月7日記事参照)、政府はこの期間は債務上限なく借り入れができる。しかし、8月以降は7月末時点の債務残高が新たな上限額となる。CBOによると、8月1日までに債務上限の停止期間の再延長や上限額の引き上げといった対策が議会で講じられない場合、財務省は債務の借り換えを除いた新たな借り入れができなくなるとしている。

ジャネット・イエレン財務長官は6月の議会証言の中で、8月までに債務上限額の停止または引き上げを可決しなければ、8月の議会休会と同時にデフォルトに陥る可能性があるとして、CBOの見通しよりさらに早期のデフォルト発生を懸念したほか、米国債のデフォルトは「経済に壊滅的な影響を与える」と警告している(注1)。また、7月23日には同内容の書簡外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを民主党のナンシー・ペロシ下院議長(カリフォルニア州)に送り、早期の対応を訴えるとともに、債務上限対応のため州・地方政府向け特別国債(SLGS、注2)の発行を7月30日正午から停止することを発表し、必要に応じてさらなる対応を取らざるをえないとした。

ただ、議会の審議日程は窮屈だ。7月23日現在、超党派のインフラ投資計画(2021年6月25日記事参照)がいまだ審議入りできていないことに加え、民主党が単独採決を目指す3兆5,000億ドル規模の投資計画(2021年7月16日記事参照)も控えている。これらの歳出関連法案に併せて債務上限を引き上げることも可能だが、共和党のミッチ・マコーネル上院院内総務(ケンタッキー州)は「債務上限引き上げに賛成する共和党議員はいない」として、対立姿勢を鮮明にしている。8月の議会休会までにバイデン政権や民主党がどういった対応を取るか注目される。

(注1)CBOや財務省が警戒を強めるのは、これまでに債務上限の引き上げがたびたび政治問題化するとともに、市場に混乱をもたらしたため。特にオバマ政権下の2011年8月には、議会で期限直前に引き上げに合意できたものの、デフォルト発生リスクを踏まえた民間格付け会社が米国債の格下げを発表し、経済が金融市場を中心に大きく混乱した。このような悪影響を回避するためには議会での早期対応が重要となる。

(注2)連邦政府が発行する州・地方政府向けの特別国債。低金利のため、州・地方政府が他の債務からの借り換える際などに利用される。

(宮野慶太)

(米国)

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