イスラエル保健省、ファイザー製ワクチンの効果で新たな分析結果を公表

(イスラエル)

テルアビブ発

2021年07月28日

7月22日付の「タイムズ・オブ・イスラエル」紙は、イスラエル保健省が同日に新型コロナワクチンの効果について、新たな調査・分析結果を発表したと報じた。保健省によれば、米国ファイザーとドイツ・ビオンテック製ワクチン(以下、ファイザー製ワクチン)について、入院を要する程度の症状を抑止する有効性は88%、重症化を防ぐ効果は91%と高いものの、新型コロナウイルスの感染防止効果は39%、軽症に抑える効果は41%とした。同調査・分析は、デルタ株への感染事例がイスラエル国内でも確認され、感染拡大が認識された6月以降のデータに基づいて行われた。

ただし、他の報道記事では、今回対象となったデータに含まれる検査の多くは感染が広がっている地域・コミュニティ、あるいは高齢者を中心にされている可能性があることから、母集団に統計上の偏りがあり得ると指摘している。先に英国の医学誌に発表された「デルタ株に88%有効」とする結果とは乖離がみられ、今後、より精緻な調査・分析が待たれている。

今回の発表に先立つ7月5日、保健省はファイザー製ワクチンの感染抑止効果が64%まで低下したとする調査・分析結果を発表していた。それに対しても、7月21日付「タイムズ・オブ・イスラエル」紙が「一連の保健省の分析結果は、より慎重に捉えるべき」とする複数のイスラエル国内の専門家の意見を紹介している。

また、7月23日付の「i24」紙は、イスラエルでワクチン接種が開始された2020年12月以降、接種した月が早いほど効果が下がっているとした保健省の調査結果を報じた。これによれば、現時点での感染抑止の面での有効性は、1月接種:16%、2月接種:44%、3月接種:67%、4月接種:75%となっているが、重症化抑止の観点では、1月の接種者も引き続き86%の有効性を保っており、2月以降の接種者との差はわずかという。

保健省によれば、7月27日現在、イスラエル全国民の約6割に当たる532万1,379人が2回目のワクチン接種を完了している。他方、7月26日の1日当たりの新規感染者数は2,112人、重症者数は124人となり、2021年3月中旬以来の高い水準になっている。政府は6月1日以降、新型コロナウイルス関連の各種規制を解除してきたが(2021年5月26日記事参照)、直近の感染者数の再増加を受けて、7月29日から屋内外を問わず100人以上が集まるイベント参加にワクチン接種証明などの提示を義務付ける「グリーンバッジプラン」を施行するとしている。

(吉田暢)

(イスラエル)

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