3人目の出産容認に関する政策を発表、3歳以下の子育て費用の個人所得税控除も検討

(中国)

北京発

2021年07月29日

中国共産党中央委員会および国務院は7月20日、「出産政策の最適化による人口のバランスのとれた長期的発展の促進に関する決定(以下、決定)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した(注1)。決定では、人口構造を改善して高齢化に積極的に対応する国家戦略を実現し、中国の人的資源の優位性を維持し、合計特殊出生率の下降傾向を緩和する上で重大な意義がある、と解説している。

決定では、3人目の出産を容認する政策の実施について、「人口・計画生育法」の改定、「社会扶養費」など産児制限措置の撤廃、出産や育児、教育にかかるコストの引き下げなどの措置が規定された。

具体的な子育て支援策としては、多様な託児サービスを提供すること、産休・授乳休暇制度を厳格に実施し、一部の地域において、父母の育児休暇制度を試行すること、幼稚園に2~3歳児を受け入れるよう奨励すること、3歳以下の幼児にかかる子育て費用について、個人所得税からの控除を検討すること、未成年の子がいる家庭に対する家賃補助や住宅購入時の優遇策を地方政府が検討すること、などが盛り込まれた。

国家衛生健康委員会の于学軍副主任は7月21日の記者会見で、「2021年の出生数および出生率の水準は依然として減少傾向」との見通しを示した上で、「3人目の出産を容認する政策および関連措置を実施する目的は、さらなる人口減少を防止し、出生率の適切な水準を実現し、人口の均衡ある長期的発展を促進することにある」と述べた。

同委員会人口家庭司の楊文庄司長によると、中国には約4,200万人の3歳以下乳幼児がおり、そのうち3分の1の家庭では託児サービスに対する需要が強い一方、実際のサービス供給は乳幼児数の5.5%程度にとどまっている。そのため、今後は託児サービスの提供に重点を置き、「第14次5カ年(2021~2025年)規画」に盛り込まれた福祉託児サービスの拡充などを実施するとともに、中央財政による投資を拡大し、総合的な託児サービス機関やコミュニティー託児サービス施設の建設を支援することなどに取り組むとした(注2)。

また、武漢科技大学金融証券研究所の董登新所長は「託児サービス推進のカギは託児施設の量的拡大にある。公営託児施設を新設・拡張するほか、公設民営方式、政府補助、アウトソーシングなど、多様な方式による託児サービスへの民間参入を奨励するべき」とコメントした(「21世紀経済報道」7月21日)。

(注1)5月31日に開催された中央政治局会議において、「出産政策の最適化による人口の均衡ある長期的発展の促進に関する決定」が審議され、夫婦1組につき3人までの出産を認める方針が示されていた(2021年6月8日記事参照)。

(注2)国家発展改革委員会などは6月25日、第14次5カ年規画期間における託児サービスの整備方針を発表していた(2021年7月6日記事参照)。

(趙薇)

(中国)

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