オーストリアの復興計画、EU基金から35億ユーロ拠出に向け、欧州委の審査完了

(オーストリア、EU)

ウィーン発

2021年06月28日

オーストリア政府は6月21日、欧州委員会がオーストリアの「国家復興・レジリエンス計画(PNRR)」の審査を終えたことを発表した。4月30日に欧州委員会に提出した同計画は、鉄道など交通の整備、デジタル化、環境保護への投資に重点を置いた内容で、総額45億ユーロの投資計画になっており、財源はEUの復興基金「次世代のEU」(2020年9月24日付地域・分析レポート参照)の核となる、新型コロナウイルス危機からの復興のための加盟国への支援基金「復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)」から35億ユーロ、オーストリア政府が10億ユーロを負担する。今後4週間の間に、RRFの下で、オーストリアに35億ユーロ拠出することについてのEU理事会の承認後に、予算執行が可能となる。

セバスティアン・クルツ首相は同日、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長との共同会見で、「次世代のEU」」によるオーストリアの復興計画への支援について謝意を表明するとともに、「今後の大きな目標は、環境保護やデジタル化への持続的な投資を達成することだ」と述べた。

PNRRの主な内容は以下のとおり。

  • デジタル化(18億2,800万ユーロ):ブロードバンド拡大に8億9,100万ユーロ、企業のデジタル化とエコロジー化に6億500万ユーロ、学校や行政のデジタル化に3億3,200万ユーロ
  • 環境保護(15億800万ユーロ):環境にやさしい輸送手段(注)への投資に8億4,900万ユーロ、リサイクリング事業に3億5,000万ユーロ、再生可能エネルギーへの転換に2億900万ユーロ、気候中立に1億ユーロ
  • 教育・研究開発;(8億6,800万ユーロ):研究開発支援に4億6,200万ユーロ、職業訓練に2億7,700万ユーロ、教育の向上に1億2,900万ユーロ
  • 健康・福祉・芸術など(2億9,600万ユーロ):母子のデジタルパス、困窮世帯への支援などに1億2,500万ユーロ、地域に密着した介護提供に1億400万ユーロ、文化財・文化施設の修理などに6,700万ユーロ

これらの復興計画は、2026年までに実施される。

(注)地方の鉄道の整備や電動バスなどの乗り物と、そのインフラ投資が含まれる。

(田中由美子)

(オーストリア、EU)

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