不信任決議を受けた首相が辞意表明、解散総選挙は選択せず

(スウェーデン)

ロンドン発

2021年06月30日

スウェーデンのステファン・ロベーン首相(社会民主労働党)は6月28日、野党が提出した不信任案が21日に賛成多数で可決されたことを受けて辞意を表明し、内閣総辞職した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。同国で不信任決議によって退陣を迫られたのは初めて。次期政権発足までは同氏が首相にとどまり、暫定政権となる。同氏は不信任案可決により、辞職か解散総選挙の選択を迫られていた。

複数のメディアによると、不信任案が提出された要因は、ロベーン首相が掲げた新築アパートの家賃上限撤廃計画とされる。これは、慢性的に続く同国の賃貸住宅供給不足を是正すべく、現在の家賃上限規定を撤廃し投資インセンティブを与えることで、賃貸住宅建築を促進するというものだが、家賃の高騰を誘発すると以前から反対の声が出ていた(「ロイター」6月21日)。これをめぐり閣外協力関係にあった左翼党が離反、野党・スウェーデン民主党が提出した内閣不信任案の可決に至った。

今後、アンドレアス・ノーレン国会議長が最大4回、新首相人事について議会へ諮ることができる。議会承認が得られない場合は、2022年9月に予定されている総選挙を前倒しして実施する必要が生じる。なお、解散総選挙となれば、1958年以来の出来事となる。

ロベーン首相は会見の中で、自身の辞意表明について「『新型コロナ禍』での不信任決議を経て、スウェーデンの政治は難しい状況になっている」とし、「この状況で政権の優先事項は国にとって最善の策をとることで、解散総選挙ではなく辞任を選んだ」としている。

スウェーデンでは、2018年9月に前回総選挙が実施されたものの、約4カ月もの間、新首相が信任されず政治的混乱が続いていた。その後、国会議長の推薦による3回目の国会投票の末、ロベーン首相が選出されていた(2019年1月23日記事参照)。

(篠崎美佐、尾崎翔太)

(スウェーデン)

ビジネス短信 eb88742dd1974421