ロシア側の品質試験に合格、ワクチンの国内生産開始へ

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年06月07日

アルゼンチンのカルラ・ビソッティ保健相は6月2日、同国の製薬会社ラボラトリオス・リッチモンド(以下、リッチモンド)が試験的に製造した新型コロナウイルスワクチン「スプートニクV」が、その開発元であるロシア国立ガマレヤ研究所による品質試験に合格した、と発表した。

リッチモンドは、ロシア製ワクチンの国内生産を目指して2021年4月に試作品をロシアに送っていた(2021年4月23日記事参照)。同社によると、法的要件を達成すれば、今後数日以内にワクチンの生産を開始することができる見込みという。国営通信テラムによると、同社の生産設備では週50万回接種分の生産が可能だが、ワクチンの生産に必要な有効成分はロシアからの輸入に依存する。

感染拡大が止まらないアルゼンチンでは、厳しい行動規制を導入しているものの、人の移動を抑制するには至っていない。長期にわたる行動規制で国民は疲弊しており、規制を守らず出歩く人の数は増えている。また、苦しい経営状況に追い込まれている飲食店や商店の中にも、規制の範囲を超えて営業するところが少なくない。

そのため、政府はワクチン接種を急いでいるものの、ワクチンの確保に苦戦しているのが実情だ。国民の約3割がワクチンを接種済みだが、2回接種した人の割合は6.5%にとどまる。1回目の接種を優先し、2回目の接種を先送りしているためだが、集中治療室に搬送される新規感染者の12.1%はワクチンを1回接種した人だ、と報じられている(現地紙「クラリン」6月2日)。

サンティアゴ・カフィエロ首相は5月27日、中国の康希諾生物(カンシノ・バイオロジクス)から新たにワクチンの供給を受けることで、同社と合意したと発表した。また、ビソッティ保健相とセシリア・ニコリーニ大統領補佐官は5月29日、キューバのミゲル・ディアスカネル大統領と会談。会談に同席したアルゼンチンのルイス・イラレギ駐キューバ大使は、キューバのワクチン「ソベラナ2」「アブダラ」について、キューバ国民の接種率が7割を超える8月にはアルゼンチンに提供される可能性がある、と述べている。国内生産を含め、アルゼンチン政府はワクチンの確保に奔走している。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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