米税関当局、中国の水産大手に対し輸入差し止め命令、強制労働を理由に

(米国、中国)

米州課

2021年06月01日

米国のアレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官は5月28日、中国の漁船団が強制労働を行っていることを合理的に示す情報があったとして、米国税関国境保護局(CBP)が違反商品保留命令(WRO、注)を発出したことを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

今回のWRO対象となったのは、遠洋マグロ漁業を行う中国の水産大手の大連遠洋漁業金槍魚釣で、CBPの調査によると、同社では暴行や賃金の不払い、過酷な労働や生活の環境など、ILOが規定する強制労働の11指標全てが行われていたとしている。WRO発出を受け、同社の所有または運営する船舶が収穫したマグロやメカジキなどの魚介類を米国の全ての入港地で保留することが指示されている。また、同措置は、ツナ缶やペットフードなど、水産物を原材料にして生産される商品にも適用されるという。

マヨルカス長官は声明で「労働者を搾取する企業に、米国でビジネスを行う場所はない」「強制労働によって生産された製品は労働者を搾取するだけでなく、米国の企業に損害を与え、消費者に非倫理的な購入をさせることになる」と述べ、今回の措置を講じた背景を説明した。

中国に対するWRO発出は、新疆ウイグル自治区で生産された綿やトマト、それらの派生製品の輸入留保を目的として発令した2021年1月(2021年1月15日記事参照)以来で、バイデン政権下では初のWRO発出となる。バイデン政権は発足後初めて連邦議会に提出した通商政策方針で、今後も強制労働に基づく製品の輸入を認めず、企業の説明責任を高めると記述していた(2021年3月3日記事参照)。

(注)強制労働を伴う方法で生産された疑いのある輸入産品に対して、米国の全ての税関地点で保留し、米国内での流通を制限する措置。

(滝本慎一郎)

(米国、中国)

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