UNCTAD、2020年の世界の対内直接投資は前年比34.7%減と発表

(世界)

国際経済課

2021年06月24日

国連貿易開発会議(UNCTAD)が6月21日に発表した「世界投資報告2021」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2020年の世界の対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は前年比34.7%減の9,989億ドルだった(添付資料表参照)。新型コロナウイルスの影響で、2020年の世界の直接投資は、2005年以来最も低く、金融危機下の2009年を約20%割り込む水準に縮小した(注1)。UNCTADは対内直接投資額の減少について、新型コロナウイルスへの対応として世界中でロックダウンが実施されたことで、既存の投資プロジェクトに遅れが生じたことや、景気後退の見通しが多国籍企業に新規投資プロジェクトの見直しを促したと指摘している。

地域別にみると、先進国・地域の対内直接投資額は前年比58.3%減の3,122億ドルとなった一方、新興・途上国・地域は同8.4%減の6,626億ドルと落ち込みは限定的だった。先進国・地域の中では、北米が41.7%減の1,801億ドル、欧州が80.0%減の725億ドルだった。先進国向けが大幅に縮小したことで、2020年の世界の対内直接投資に占める新興・途上国・地域向けの割合は66.3%と、前年(47.3%)に比べ上昇した。

主要国・地域別にみると、EUの対内直接投資額は72.9%減の1,032億ドルに減少した。加盟国の中でも、オランダは大規模な株式売却により1,153億ドルの引き揚げ超過となった。情報通信技術(ICT)と石油化学分野で複数の大規模な持ち株会社が解散・再編を実施したことが背景にある(注2)。米国は前年比40.2%減の1,563億ドルだった。新興・途上国・地域では、中国が前年比5.7%増の1,493億ドルとなった。UNCTADは、中国の新型コロナウイルスの影響からの迅速な回復と投資規制の撤廃が背景にあると指摘している。このほか、香港は企業による現地拠点への貸し付けや再投資収益の増加により前年比61.7%増の1,192億ドル、インドはICTと建設分野が投資を牽引し、26.7%増の641億ドルと、新型コロナウイルスの影響下でも金額が増加した。ASEAN向けは前年比24.9%減の1,359億ドルで、加盟国内で最大の受け入れ国シンガポールは前年比20.7%減の906億ドルだった。

UNCTADは、2021年の世界の対内直接投資は前年比10~15%の増加になると見込む。対内直接投資額は2021年中に底打ちして回復に転じるものの、新型コロナウイルス発生以前の水準にはまだ戻らないという(注3)。地域別では、欧州(15~20%増)、北米(10~20%増)などの先進国・地域や、東アジア・東南アジアが回復を牽引する見通しだ。2022年については、現在の予測に基づくと、世界の対内直接投資は前年比15~20%増の最大1兆4,000億ドルとなる見込みで、最も楽観的なシナリオの場合、2019年(1兆5,000億ドル)に近い水準まで回復する可能性があるという。ただ、UNCTADは今後の見通しは不確実性が高く、経済回復や新型コロナウイルスのパンデミックの再燃、復興パッケージが対内外直接投資に与える影響、政策の働きかけ次第だとしている。

(注1)世界の対内直接投資額は、2005年が9,532億ドル、2009年が2,391億ドルだった。

(注2)UNCTADは、オランダの対内直接投資額は引き揚げ超過となったが、オランダと英国のユニリーバ本社の英国への統合が引き揚げ超過を一部相殺したと指摘している。

(注3)UNCTADは2021年の世界の対内直接投資額は、2019年比25%減、2016年比40%超減の水準になるとしている。

(柏瀬あすか)

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