EUの専門家会合、アニマルウェルフェアのラベル表示に関する結論発表

(EU)

ブリュッセル発

2021年06月29日

EUで家畜の快適性に配慮した飼養などを推進する「アニマルウェルフェア・プラットフォーム」(注)は6月22日、アニマルウェルフェア(AW)の製品ラベル表示に関するサブグループによる結論PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(添付資料表参照)を発表した。

EUレベルのAWに関するラベル表示としては現在、鶏卵についてのみ飼育方法の明示が義務付けられている。そのほかにもEUでは任意の基準として、加盟国や事業者などによる独自のAWラベル表示や、その生産条件で標準的な生産現場よりもさらに厳しいAW基準を定めている地理的表示(GI)やオーガニック製品表示などがある。本来、情報を明示することで製品の付加価値が高まり、AWに積極的に取り組む生産者への支援にもつながるが、複数のラベル表示が併存することにより、消費者に明確にAWに関する情報が伝わっていないという懸念が指摘されてきた。

欧州委員会は「欧州グリーン・ディール」関連戦略として2020年5月に発表した「農場から食卓へ(Farm to Fork)戦略」(2020年8月28日付地域・分析レポート参照)の中で、AWへの取り組み強化の一環として、EUレベルで統一したラベル表示について検討を表明。2020年10月に発足した本サブグループの活動に加え、5月には欧州委として独自に調査を開始して、ラベル表示の導入に関連する条件などを検討している。欧州委は2023年末までにAWに関する既存の規制の評価と改正を発表する予定だ。

サブグループは今回、一部のEU加盟国の中には義務化に難色を示す国があり、現段階では任意のラベル表示制度で対応できるとの認識を示した。ロゴやQRコードなどによる表示によって、家畜の移送・食肉処理までを含めた生産全般について情報が得られるようにし、生鮮食品だけでなく、加工品などでも表示すべきだとした。また、EU域外からの輸入品について、域外国の事業者がEU基準と同等のガバナンス体制や技術基準を持ち、コンプライアンスチェックなどが実施できる場合、AWに関するラベル表示を認めるべきだとした。仮にAWラベル表示が義務付けられた場合、AWに関する情報がない輸入製品は、基準に従っているEU産品とは明確に区別すべきとの見解を示した。

生産者の意見取り入れを要望

欧州最大の農業生産者団体COPA-COGECAは6月22日に声明を発表し、サブグループの結論について、既に運用されている表示制度との統合や、畜産の多様性に柔軟に対応する自主的なラベル表示制度を推奨したことなどを歓迎した。その上で、ラベル表示制度の策定と運用に当たっては、農業生産者の意見を随時取り入れること、制度が科学的・農学的な根拠に基づき、測定可能で、フードチェーン全体にとって採用しやすいものとすることを欧州委に求めた。

(注)生産性や安全性を向上しつつも、家畜の快適性に配慮した飼養を行うアニマルウェルフェア関連規則の適用推進やEU基準の普及などを目指して、欧州委が2017年に設立。加盟国政府、国際機関も含む公的機関、生産者・産業団体、NGOの代表、独立した専門家らが参加している。

写真 フランスで購入した鶏卵の包装には飼育方法のほか、飼料や飼育環境などの情報も載っている(ジェトロ撮影)

フランスで購入した鶏卵の包装には飼育方法のほか、飼料や飼育環境などの情報も載っている(ジェトロ撮影)

(滝澤祥子)

(EU)

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