エチオピアで選挙実施、暫定結果発表後の混乱に警戒を

(エチオピア)

アディスアベバ発

2021年06月22日

エチオピアでは、6月21日に選挙投票日を迎えた。国政選挙547選挙区のうち、468選挙区と、それら468選挙区が属する各州の議会、特別行政都市のアディスアベバ市とディレダワ市の市議会選挙が対象となった。選挙監視には、アフリカ連合(AU)の監視団(団長:オルシェグン・オバサンジョ元ナイジェリア大統領)や市民社会団体が協力しているが、EUは監視団の派遣を見送った(アドバイザーは派遣)。投票実施を見送った選挙区は、9月6日にあらためて投票を実施する。投票日順延の中には、南部諸民族州から新たに分離して南西部州格上げを問う住民投票も含まれる。

エチオピアの投票資格は18歳以上(当該選挙区に6カ月以上居住する国民)で、国家選挙委員会によれば、最終的に選挙人登録した有権者は3,740万8,600人だった。2019年4月に予定されていた国勢調査が行われていない(2019年11月6日記事参照)ため、正確な人口は不明だが、本来の有権者の6割以上が登録したとみられる(注)。

都市や特定地方でのみ候補者を擁立した地方政党などを含めて、合計50余りの政党が今回の選挙に参加した。このほか、無所属の個人も立候補している。

注目点は、与党「繁栄党」に対して、野党がどこまで議席数を伸ばせるかにあるとみられる。特にアディスアベバ市は、多民族が暮らし、有権者の投票行動が読みにくい。アビィ・アハメド首相が率いる繁栄党は、旧連合与党「エチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)」と比べて、民営化をはじめとした経済自由化を進めるなど、リベラルな経済政策を掲げる。政治的には、民族を超えたエチオピア国民意識を訴えており、本来、都市住民層の政治意識と親和性は高いといえる。しかし、年率15~20%の水準が続く物価高騰などが影響して、生活が苦しくなっていると感じる住民は多い。2020年11月のティグライ州紛争(2020年11月9日記事参照)をはじめ、首都圏を除く地方では、治安の回復にも苦労しており、そうした地域に親類を持つ首都住民は少なくない。オロミア州に囲まれるアディスアベバ市には、オロミア民族主義的な主張を支持する青年層もいる。こうした有権者が投じる票の行方が注目される。

投票日の6月21日は、選挙委員会が官公庁を休業日とし、民間企業にもホテルや病院などを除き休業するよう要請したため、アディスアベバ市内は交通量が激減した。有権者は早朝から投票所に並び、テレビは、閣僚らが投票する様子を報道した。開票後の暫定結果は5日以内に発表される予定だが、最終結果の確定には3週間~1カ月かかる見込みだ。この間に結果をめぐって騒乱が起き、インターネットが遮断される可能性も懸念される(2020年7月10日記事参照)。在留邦人には、食糧備蓄を増やしたり、日本に一時帰国したりといった対応がみられる。

選挙結果に基づく新たな国民議会の招集は、規定によれば、10月4日となる見込みだ。

写真 投票日の通勤時間帯に空港に続く市内の大通り(ジェトロ撮影)

投票日の通勤時間帯に空港に続く市内の大通り(ジェトロ撮影)

写真 投票所で並ぶ有権者(ジェトロ撮影)

投票所で並ぶ有権者(ジェトロ撮影)

(注)国連の人口推計(2019年版中位推計による2021年の推定人口)に基づいて簡易的に計算して、ティグライ州などの今回の選挙対象外の地域も考慮に入れた。

(関隆夫)

(エチオピア)

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