オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)、水素産業ミッションを立ち上げ

(オーストラリア)

シドニー発

2021年06月03日

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は5月26日、産学官連携による研究開発と商業化を促進する「水素産業ミッション外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を立ち上げたと発表した。オーストラリアで水素産業を確立し、政府が掲げる「H2アンダー2」〔水素1キログラム当たり2オーストラリア・ドル(約168円、豪ドル、1豪ドル=約84円)以下とする価格目標〕の達成に資することが期待されている。

水素産業ミッションには、産業・科学・エネルギー資源省、再生可能エネルギー庁(ARENA)、オーストラリア全国エネルギー資源(NERA)などの政府機関や、フューチャー・フューエルズCRC、オーストラリア水素協会などの業界団体のほか、ビクトリア州政府や同州のスウィンバーン工科大学、鉄鉱石採掘大手フォーテスキュー・メタルズ・グループ(FMG)などが参画し、今後5年間で100件以上のプロジェクトに6,800万豪ドルを拠出する計画となっている。

同ミッションでは、研究開発と実証プロジェクトの推進に焦点を当て、(1)水素関連プロジェクトの情報やモデリングツールなどを提供する「水素ナレッジセンター」の設立、(2)リスク低減のための戦略的・技術的分析やアドバイスの提供、(3)水素のバリューチェーンやリスク低減に資する技術を検証する実証プロジェクトの実施、(4)スケールアップに向けた技術開発への投資、を4つの主要な柱に設定する。具体的には、最初の1年で水素ナレッジセンターを立ち上げ、3年目に水素製造技術の実証施設を設置し、5年目には遠隔地での電力システムの実証を行い、水素製造技術の商用化を目指すという。なお、同ミッションの一環として、オーストラリア水素協会に加盟するトヨタ自動車オーストラリアは、CSIROがビクトリア州で開発している水素充填(じゅうてん)施設での実証試験に使用するため、CSIROに燃料電池自動車「新型MIRAI」をリースすると発表している。

エネルギー・排出削減担当相のアンガス・テイラー氏は「産業界と研究機関との連携は、クリーンで競争力のある水素産業の成長に資する」と強調した。また、「水素産業の発展によって、2050年までに8,000人以上の雇用創出と年間110億豪ドルの経済成長が見込まれる」と期待を寄せた。

(住裕美)

(オーストラリア)

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