5月の米CPI、前年同月比5.0%上昇、前月より伸びが加速

(米国)

ニューヨーク発

2021年06月11日

米国労働省が6月10日に発表した2021年5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比5.0%上昇し、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は前年同月比3.8%上昇となり、民間予想(ダウ・ジョーンズ)のそれぞれ4.7%、3.5%を上回った。いずれも前月の上昇幅(それぞれ4.2%、3.0%)を上回っており、CPIは2008年8月以降では最も高い伸びとなった。前年同月比は、新型コロナウイルスの感染拡大により前年に大きく物価が落ち込んだ反動が出ているとみられる。他方、前月比(季節調整値)ではCPIが0.6%、コア指数が0.7%の上昇となり、前月の伸び(それぞれ0.8%、0.9%)をともに下回っている。

品目別に前年同月比でみると、前月とほぼ同じ項目が高い上昇を示している。エネルギー価格は28.5%上昇、特にガソリン価格が56.2%上昇(前月:49.6%)している。財は6.5%の上昇で、うち中古車が29.7%上昇(21.0%)となったほか、衣料品も5.6%上昇と前月(1.9%)から伸びが加速している。また、サービスは2.9%上昇し、うち輸送サービスが11.2%上昇(5.6%)で、そのうちの自動車保険が16.9%上昇(6.1%)、航空運賃が24.1%上昇(9.6%)となっている(添付資料表参照)。経済活動制限緩和による、移動サービスに関連した需要の急激な増加に加え、労働力や半導体不足など供給面の制約も、これらの項目の物価上昇の背景にあるとみられる。

急激な物価上昇は一時的との見方

最近の急激な物価上昇に対しては、一時的との見方が、市場では大勢だ。PNCフィナンシャル・サービス・グループのチーフエコノミスト、ガス・ファウチャー氏は「パンデミックで最も打撃を受けた価格(例えば、中古車、航空運賃、ホテル宿泊料)では、急激な物価上昇が続くだろう」「これは経済再開による混乱の一部であることを示唆しており、インフレは今年後半に落ち着くと予想している」と述べた。また、「経済全体をみると、物価の動きは多くの分野で非常に緩慢で、これらが持続的に上昇するにはまだかなり時間がかかるだろう」と述べている。予想を上回る物価上昇が記録される中、5月の失業率は予想を下回る、やや改善だった(2021年6月7日記事参照)。連邦準備制度理事会(FRB)も、最近の物価上昇は一時的で景気は過熱していないとして、早期の金融緩和縮小を再三、否定しているが、物価や雇用の最新の状況を踏まえて、次回6月15日、16日に開かれる連邦公開市場委員会(FOMC)において、どういったメッセージが市場に発信されるかが注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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