生鮮ECの盒馬鮮生と叮ドン買菜、新たな事業戦略を相次ぎ発表

(中国)

上海発

2021年06月16日

中国の生鮮EC大手の盒馬鮮生が5月31日、叮ドン買菜(ドンは口へんに冬)は6月1日、それぞれ今後の新たな事業戦略を発表した。1兆元(約17兆円、1元=約17円)を超える中国の生鮮EC市場をめぐる競争が一層激しくなっている(「解放日報」6月7日、2020年6月29日付地域・分析レポート参照

盒馬鮮生は「盒馬とインキュベーター」と題し、ヒット食品を生み出すインキュベーターを立ち上げる。盒馬はサプライヤーには出資を求めずに、パートナーへの敷居を下げながら、飲食店ブランドや老舗ブランド、ネット上の人気ブランドと提携し、100のヒット商品を生み出す戦略を掲げる。盒馬はこれまでも、資金力やビッグデータ、研究開発力、サプライチェーンなど自社のリソースを強みに、サプライヤーと連携して市場ニーズにマッチしたチーズ豆乳団子、ちまきなどの新商品を生み出してきたが、この取り組みをより強化する。

一方、叮ドン買菜は、食品安全を専門とする上海交通大学や海洋大学などの研究機関と連携しながら、食品の安全性を追求した「子供用食品特別コーナー」を設置した。叮ドン買菜研究院の申強院長は「叮ドン買菜の利用頻度が高いユーザーのうち80%が女性、また75%が子供のいる家庭のため、子供用食品特別コーナーを打ち出した」と述べた。叮ドン買菜は「最速で29分以内に配達」という正確でスピーディーな配達と商品の多様性に加え、品質の良さに定評があり、ユーザーのリピーター率も65%と比較的高い。

投資ファンドのIDG資本の調査によると、中国の生鮮市場では、リアル店舗での販売額が全体の90%を占めているが、店舗数と売り上げのいずれも近年、減少傾向にある。今後5年で従来の販売チャネルの売り上げ規模は現在の半分程度まで減少する一方、オンラインの生鮮EC市場は拡大が見込まれる。EC事業者間の競争がより激しさを増すとみられる(「上観新聞」6月7日)。

(侯恩東)

(中国)

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