トランス脂肪酸の規制、7月から開始

(ブラジル)

サンパウロ発

2021年06月04日

ブラジル国家衛生監督庁(ANIVISA)がトランス脂肪酸と部分水素添加油脂の使用に関する規制を定めた2019年12月31日付決議332号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにより、7月1日以降、トランス脂肪酸の使用量は100グラム当たり2グラムを超えてはならなくなる。

同決議は、世界保健機関(WHO)が2018年5月14日に発表した食品中のトランス脂肪酸を減らす段階的な指針REPLACE計画外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注)の発表を受けたもの。同計画では、トランス脂肪酸の排除に向けて摂取量を段階的に低減し、2023年までに食品中の油脂100グラム当たり2グラム未満にすることを目標としている。

ANIVISAはこれまで猶予期間を設けていたが、7月以降、期間を3段階に分けて規制を適用する。

第1段階は、7月1日以降、精製油のトランス脂肪酸は総脂肪100グラム当たり2グラム超の使用が禁止される(同決議第5条)。

第2段階は、7月1日から2023年1月1日まで、最終消費者や外食産業向けの食品で、トランス脂肪酸は総脂肪100グラム当たり2グラムを超えることが禁止される(同決議第6条)。

第3段階は、2023年1月1日以降、食品用の部分水素添加油脂とそれらを配合した食品の製造と輸入、使用、提供が禁止される(同決議第7条)。

WHOはREPLACE計画を発表した2018年5月14日付プレスリリースで、トランス脂肪酸の多量摂取が原因の心血管疾患の死亡数は毎年推定50万人を超えると述べている。

トランス脂肪酸の多量摂取による被害を減らすため、2008年には汎米保健機構(PAHO)は、トランス脂肪酸の含有量の上限を食用油とマーガリンの場合2%、加工食品の場合5%に抑えるという目標を定めた。ブラジルでも、トランス脂肪酸による健康被害は以前からあったようで、最近では、学校給食の基本政策「国家学校給食プログラム」(PNAE)の枠組みの中で、教育省の外郭団体である国家教育開発審議会の2009年7月16日付決議38号により、学校給食でのトランス脂肪酸使用を総エネルギー量の1%以内に抑えることを定めた。また、国内の民間メーカーと加工食品協会(ABIA)、保健省は、2008年から「成人病予防を目的に、塩分などとトランス脂肪酸の使用を減らしていく」を目標としたパートナーシップを結んで取り組んでいる。

(注)WHOのREPLACE計画では、以下について呼びかけている。

  1. Review:工業的に生成したトランス脂肪酸の供給食品と必要な政策変更の見通しについて再検討する
  2. Promote:工業的に生成したトランス脂肪酸をより健康的な油脂へ置き換えることを推進する
  3. Legislate:工業的に生成したトランス脂肪酸を排除するための規制措置を法制化する
  4. Assess:食料供給におけるトランス脂肪酸の含有量、集団におけるトランス脂肪酸消費の変化を評価・監視する
  5. Create:政策決定者、生産者、供給者、一般市民の間で、トランス脂肪酸の負の健康影響について意識を高める
  6. Enforce:政策と規制の順守を強化することを目的とする

(斎藤裕之)

(ブラジル)

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