中国外交部、米国による中国企業への抑圧に断固反対、米の制裁発表を受け

(中国、米国)

北京発

2021年06月11日

ジョー・バイデン米国大統領は6月3日、監視技術分野を含む中国の軍事産業に関わる中国企業に対する米国人(注)による証券投資を禁じる大統領令に署名した。

今回の大統領令では、2020年11月に当時のトランプ大統領が導入した措置に関して、人権侵害に利用され得るとして、対象企業の範囲に監視技術分野も加え、59社の中国企業を投資禁止対象に指定した。米東部時間8月2日午前0時以降、米国人は証券などを通じた指定企業への投資が禁止されることに加えて、既に保有している証券などは2022年6月3日午前0時までに売却することが求められる(2021年6月7日記事参照)。

中国外交部の汪文斌報道官は今回の措置に対し、「米国政府は国家安全の概念を一般化し、国家の力を乱用し、手段を選ばず中国企業を抑圧・制限しており、中国はこれに断固として反対する」と表明した。さらに「中国企業を抑圧する各種のいわゆるリストを撤回し、中国企業のために公平、公正、無差別のビジネス投資環境を提供するよう求める。中国は必要な措置を取り、中国企業の正当かつ合法な権益を断固として守る」と強調した。

北京大成法律事務所の蔡開明は今回の措置について、「中国国外で使用される、人権侵害行為に使用される中国の監視技術がもたらす脅威」に的を絞っていると解説した。その上で、米国政府は、軍事工業企業がもたらす脅威と同様に、これらの「米国と同盟国の安全あるいは民主的価値観を破壊する企業」に対する米国民の投資を禁止したことから、バイデン政権は「人権と民主」という価値観をより重視していると分析した(「網易」6月4日)。

蔡氏はまた、今回の措置によって生じる影響として、(1)リストに掲載された企業にとっては、米国の投資家からの投資の喪失と、国外市場での上場廃止などの影響がある、(2)証券取引に関わる投資銀行、証券会社などの仲介サービス業者が米国の投資家と共謀して大統領令に違反したとみなされるコンプライアンスリスクに直面する可能性がある、(3)財務長官に対し、防衛および関連産業に関わる企業や、「人権侵害」を目的とした監視技術に関わる企業と、それらの親会社および子会社を追加指定する広範な権限が与えられていることなどから、リスト未掲載の企業も引き続き「中国の軍事関連企業」や「監視技術企業」に関連するリスクにさらされると指摘した(「網易」6月4日)。

(注)米国市民、永住者、米国の法律または米国内の管轄権に基づいて組織された事業体(外国支社も含む)または米国内にいる個人が含まれる。

(藤原智生)

(中国、米国)

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