ペルー初のM&A事前管理法施行、INDECOPIが主監督庁

(ペルー)

リマ発

2021年06月14日

企業間M&A(合併・吸収・買収)や合弁事業(JV)を事前に審査し、過度な事業支配力の集中を規制するペルー初の法律第31112号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(通称、M&A事前管理法)が6月14日から施行となった。

同法は、OECD加盟を目指す経済財政省(MEF)が推進し、マルティン・ビスカラ政権下の2019年3月26日に法案が議会に提出された。しかし、その後の議会解散を受けて、同法は2019年11月18日に緊急令第013—2019号として発令され、2021年3月1日施行が予定されていた。だが、2020年3月に新議会が誕生したことであらためて審議され、幾つかの修正が加えられた後、12月30日に新M&A事前管理法として議会承認を受け、2021年6月14日を施行日とした。また、2021年3月4日には同法に関する大統領令第039—2021—PCM号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが発令されている。

同法の執行機関は公正競争・知的財産保護庁(INDECOPI)となり、原則以下の条件を満たす案件が事前審査対象となる。

(1)M&A対象全社の前年度の売上高ないしは年間総所得額、またはペルー国内総株価格が11万8,000UIT(注)以上の場合。

(2)M&A対象の最低2社の前年度の各社の販売高ないしは年間総所得額、またはペルー国内総株価格が1万8,000UIT以上の場合。

※外貨が含まれる場合は、事前審査請求前の中央準備銀行(BCR)による過去12カ月の平均レートで通貨ソルに変換する。

上記(1)はグループ全体としての収益や資産を対象に、上記(2)は個々の企業の収益や資産を対象としている。これらのいずれかに該当する場合はINDECOPIの自由競争推進委員会に事前審査請求を行う必要がある。なお、これらの金額は、INDECOPIがその合理的な必要性を示した場合に更新されることになっている。また、INDECOPIのほかにも、案件審査がペルー銀行保険年金基金監督庁(SBS)や証券市場監督庁(SMV)の所管に該当する場合は、両庁への審査請求も同時並行的に求められる。

INDECOPIのハニア・ペレス・デ・クエジャル長官は「ヘスティオン」紙の取材に対して「3月施行の予定から遅れた背景には、審査の迅速化を図るために庁内の改革や人材育成を行った」と述べている。また、外資系企業や海外投資家の同法に対する警戒についても「わが国への投資を考える外国企業や投資家の自国にも同様の法律があり、投資先にもきちんとした規定があるのは、かえって安心材料となる」と自信を見せた。

(注)課税単位。2021年6月は1UIT=4,400ソル(約12万3,200円、1ソル=約28円)。

(設楽隆裕)

(ペルー)

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