新型コロナワクチン接種証明書の加盟国間相互接続を一部開始

(EU)

ブリュッセル発

2021年06月02日

欧州委員会は6月1日、EU域内〔欧州経済領域(EEA)に参加するアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーを含む〕の移動における検査や自主隔離の免除に向け、活用が期待される「EUデジタルCOVID証明書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(以下、COVID証明書)(2021年3月18日記事参照)の管理・認証システムとなる「EUゲートウェイ」が利用可能となったと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これにより、7月1日の正式な運用開始(2021年5月24日記事参照)を前に、準備の整った加盟国から順次、COVID証明書の利用が開始される。欧州委は5月31日には、COVID証明書の活用を含む、域内移動制限に関するEU理事会(閣僚理事会)勧告(2021年2月3日記事参照)の緩和に向けた修正案を提案(2021年6月1日記事参照)している。欧州ではワクチン接種が順調に進んでおり、4月初旬以降、新型コロナウイルスの新規感染者が減り続けていることから、夏のバカンスシーズンを前に、域内の移動制限緩和に向けた動きが今後、本格化しそうだ。

一部の加盟国では提供を開始

今回、利用可能となった「EUゲートウェイ」は、各加盟国が準備を進める電子署名キーのデータベースを、加盟国間で相互接続するためのシステムだ。各加盟国が利用者に対して発行するCOVID証明書には、氏名や生年月日などの最低限必要な個人情報、証明内容(ワクチン接種、回復、検査結果)、発行機関(病院、検査機関、医療当局など)などの情報と、発行機関ごとに設定されている電子署名キーがQRコードに含まれる。移動先の加盟国当局がこのQRコードを読み取ることで、「EUゲートウェイ」を通じて、発行元の加盟国のデータベースに接続し、電子署名キーの認証を行うことができる。なお、個人情報や証明内容を保管するのは発行元の加盟国で、移動先の加盟国や「EUゲートウェイ」には保管されない。

今回の発表によると、既に22カ国のデータベースと「EUゲートウェイ」の接続試験が行われ、ブルガリア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、クロアチア、ポーランドの7カ国では接続とCOVID証明書の発行を開始したとしている。7月1日の正式な運用開始までに、全加盟国での利用開始を目指す。

COVID証明書のEU域外国との利用に関しては、EU理事会は既に、ワクチン接種完了者の観光など不要不急の入域を認める方針を決定しており、相手国と協議の上でCOVID証明書も活用する予定だ(2021年5月21日記事参照)。ただし現時点では、今回、協議を開始したと発表されたスイスと、既に発表されている米国(2021年4月28日記事参照)を除き、域外国との協議については明らかになっていない。

(吉沼啓介)

(EU)

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