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欧州議会、ワクチンの特許放棄を支持する決議を採択

(EU)

ブリュッセル発

2021年06月11日

欧州議会は6月9日、新型コロナワクチンの一時的な特許放棄に向けた交渉を求める決議外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを賛成多数で採択した。この決議によると、欧州委員会が支持するノウハウや製造技術の移転を含めた自発的なライセンス契約に基づく生産拡大は、長期的には最も重要だが、世界規模での非独占的で自発的なライセンス契約を求めるWHOのイニシアチブ「新型コロナウイルス・テクノロジー・アクセス・プール(C-TAP)」(注)の呼び掛けに応じた製薬会社は、現時点ではないことを指摘。また、世界人口の7割が接種するためには110億回分のワクチンが必要となるが、各国・地域からの余剰分の自主的な提供による現状のアプローチでは不十分で、EUが支援する低・中所得国向けの国際的なワクチン供給枠組み「COVAXファシリティー」も、近い将来においては、供給目標を達成することはできないとしている。そこで、ワクチンの世界的なアクセス改善を念頭に、WTOの知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)上の義務の一時的な放棄に向けた交渉への率先した支持を求めたかたちだ。

決議の影響力は未知数

特許放棄とは、インドや南アフリカ共和国が提唱し、開発途上国を中心に支持を集めているもので、米国も5月に支持を表明している(2021年5月7日記事参照)。こうした特許放棄の動きに対して、欧州の製薬業界は反発しており(2020年5月10日記事参照2021年6月10日記事参照)、欧州委員会も既に、特許放棄に消極的な立場を打ち出している(2021年6月7日記事参照)。欧州理事会(EU首脳会議)のシャルル・ミシェル常任議長も、今回の採択に先立ち欧州議会で演説し、特許放棄の是非には触れなかったものの、ワクチン生産能力の拡大に注力すべきとする欧州委の立場を支持しており、EU内での立場が分かれた格好だ。

今回の採択を受け、欧州議会国際貿易委員会(INTA)のベルント・ランゲ委員長(ドイツ選出)は6月10日付の自身のツイッターで、EU理事会(閣僚理事会)と欧州委に対して、WTOにおける議論で特許放棄に賛同するように求めている。ただ、今回の決議は、賛成355、反対263、棄権71での採択となり、中道左派の社会・民主主義進歩連盟(S&D)グループ、欧州緑の党・欧州自由連盟(Greens/EFA)グループなどが支持したものの、最大会派で中道右派の欧州人民党グループの多くが反対と、欧州議会内でも意見が割れており、EU内での議論にどの程度影響を与えるかは未知数だ。

(注)新型コロナウイルス対策の医薬品の生産拡大と公平なアクセスの実現に向け、開発元によるワクチンなどの知的財産権、ノウハウ、データの、製造元との自発的な共有を促すために、WHOが2020年5月に立ち上げたプラットフォーム。

(吉沼啓介)

(EU)

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