在中欧州企業、約6割が2021年も中国事業を拡大の意向

(中国)

北京発

2021年06月14日

在中国の欧州企業で構成される中国EU商会は6月8日、会員企業の中国でのビジネス意向に関する調査結果を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(注1)。回答企業のうち、59%が2021年に中国事業を拡大すると回答した。回答率は前年比8ポイント上昇したほか、2014年以降で最も高くなっている。他方、他国・地域への移転について検討している企業は9%と過去最も低くなった。

EU商会は、欧州企業が対中投資を拡大する理由として、中国の発展見通しについて楽観的な企業が多く(68%)、中国事業を拡大させる意向を持っていると分析している。また、今回の調査結果によると、2020年の税引き前・利払い前利益(EBIT)が黒字の企業は73%に上った。なお、一部の欧州企業は、対中投資の拡大にとどまらず、中国企業との合弁企業に対する出資比率の引き上げやサプライチェーンの一層の現地化などを通じて、中国におけるマーケットシェアを維持しようとしているとEU商会は指摘している(注2)。

サプライチェーンについては、製造業企業(311社)の80%が直近2年以内に自社のサプライチェーン戦略について評価を実施したと回答した。評価を実施した企業の中では、「何ら重大な変更を行う予定がない」との回答が38%で最も多く、「サプライチェーンをさらに中国に移す予定がある」との回答が22%で続いた。「現在の中国投資の一部を他国・地域に移転する」あるいは「サプライチェーンを中国から完全に移転する」という回答は計5%にとどまっている(注3)。

EU商会の分析によると、多くの欧州企業が、中国で競争力を失うことはグローバル市場での競争力低下につながると考えており、米国と中国の間で貿易摩擦や技術面のデカップリングがいっそう激化した場合、多くの在中欧州企業にとって、リスクを減少させるためには、サプライチェーンをできるだけ中国内に移転することが必要になるとされている(注4)。

ビジネス環境上の課題については、市場参入制限や監督管理上の障壁があるとの回答が45%となった。また、ネガティブリストによる直接的な禁止・制限以外の間接的な市場参入障壁(政策上の問題などにより、手続きや許認可取得が困難など)が存在するとの回答が33%あった。

(注1)2021年1~2月に会員企業1,262社にアンケートを実施し、585社から回答を得た。

(注2)合弁企業における自社の出資比率を現在から今後2年後までに引き上げる意向があると回答した企業は46%だった(既に中国企業の持ち分を全て購入し、単独資本化したとの回答を除く)。

(注3)いずれも製造業企業311社を母数とする回答率。

(注4)米中間のデカップリングとその対応などについては、EU商会などが2021年1月に発表した「デカップリング」報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおいて分析されている。

(小宮昇平)

(中国)

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