オーストラリア、中国の大麦に対する追加関税めぐりパネル設置を要請

(オーストラリア、中国、世界)

国際経済課

2021年05月06日

オーストラリアは4月28日、WTOの紛争解決機関(DSB)会合で、中国の大麦に対する追加関税措置をめぐりパネル(小委員会)の設置を要請した。同会合では、中国が本要請に反対したため、パネルの設置は見送られた。しかし、次回以降の会合でオーストラリアが再度要請をすれば、パネルが設置され、追加関税措置のWTOルールとの整合性が審理される見込みだ。

中国は2020年5月、オーストラリア産の大麦に計80.5%の追加関税(うちアンチ・ダンピング関税73.6%、相殺関税6.9%)を課すことを決定し、その適用を始めた(注1)。これを受けて、オーストラリアは同年12月16日、当該措置のWTOルール違反の可能性を指摘し、中国に正式に協議を要請した(2020年12月17日記事参照)。協議は2021年1月28日に行われたが、和解には至らず、パネル設置を要請した。

オーストラリアによれば、中国はアンチ・ダンピング税と相殺関税の賦課を決定する過程で、調査手続きなどがWTOルールに整合していなかったという(注2、3)。これに対し中国は、公平で透明性の高く、念入りな調査を行った結果、オーストラリアの慣行が自国の産業に損害を与える貿易歪曲(わいきょく)的なものであることを特定したと主張する。中国は、オーストラリアによるパネル設置要請を時期尚早として、協議の継続を呼び掛けている。

中国はオーストラリアの大麦輸出の最大の相手国で、干ばつの影響を受ける前である2018年の対中輸出額は約14億1,000万億豪ドル(約1,185億円、1豪ドル=約84円)に上った(注4)。しかし、2020年の輸出額は2018年比で約3分の1の約5億豪ドルまで落ち込んだ。

(注1)追加関税の対象となる大麦のHSコードは1003.1000ならびに1003.9000。

(注2)オーストラリアの詳細な主張はこちら外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(注3)WTOのアンチ・ダンピング協定は、輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出(ダンピング輸出)が、輸入国の国内産業に被害を与えている場合に、一定の条件の下で、その価格差を相殺する関税を賦課することを認める。また、補助金および相殺措置に関する協定は、輸出産品が輸出補助金など特定の政府補助金を受けている場合、その影響から国内産業を保護するため、一定の条件の下で、当該補助金額の範囲内で相殺関税を賦課することを認めている。

(注4)「Global Trade Atlas」(IHS Markit)。

(山田広樹)

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