水素国家戦略2030フォーラムを開催、水素産業への期待が高まる

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年05月25日

「水素国家戦略2030フォーラム」が5月18日、ブエノスアイレス市で開催された。アルゼンチン政府は国内の水素産業の発展に高い期待を示した。

登壇した経済省のハビエル・パパ次官(エネルギー計画担当)は、シェールガスから生産する「ブルー水素」を起点とした水素産業の発展に期待を寄せた。また、ガスパイプラインのネットワーク、天然ガスの改質過程で発生する二酸化炭素(CO2)を回収する技術の導入を主な課題として挙げた。ネウケン州のバカ・ムエルタ鉱区のシェールガスの埋蔵量は世界2位を誇る。

政府は、グリーン水素にも期待を寄せる。北部の高い日射量を生かした太陽光発電、南部の豊富な風量を生かした風力発電によって水素を生産することが可能で、「発電向けの再生可能資源の使用を促進する法律(法律第27,191号)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」や「再生可能エネルギーの分散型発電を促進する法律(法律第27,424号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」など再生可能エネルギーを促進するための法的枠組みが既に整備されていると述べた。なお、アルゼンチンでは、2006年に「水素推進法(法律第26,123号)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」も公布されている。

パパ次官は、原子力発電で生成した「ピンク水素」も生産可能と付け加えたほか、政府内に省庁間水素ラウンドテーブルを設置し、水素の生産、輸送、技術、コストなどの情報収集、分析を行っていることを紹介した。

民間も、水素産業の発展に向けて動いている。2020年7月、国有の石油会社YPF傘下のY-TECと科学技術・イノベーション省傘下の国家科学技術研究会議(CONICET)が中心となり、「アルゼンチンにおける水素経済開発のためのコンソーシアム(H2ar)」を設立した。コンソーシアムの目的は、パイロット・イニシアチブの実施分野に関するロードマップの策定、アーリームーバーとなることで水素経済における優位な地位を確保すること、アルゼンチンにおける水素の生産能力、技術の開発におけるルール形成への貢献だ。CONICETによると、2020年10月末時点で、次の34社がコンソーシアムに参加している。

  • YPF、シーメンスエナジー、トヨタ・アルヘンティーナ、カーギル、アルストムグループ、パンパ・エネルヒア、テナリス、テルニウム、スカニア、YPFルス、プロフェルティル、コンパニア・メガ、TGN、TGS、ジェネイア、ベーカーヒューズ、住友商事、ロマ・ネグラ、IEASA、エマソン、ABB、CGC、トラフィグラ、エクスプロラ、シカ、ABOウインド、AESアルヘンティーナ、エア・リキード、ハネウェル、エアープロダクツ、ハイチコ、プラクスエア、AESA、ソリュフォース

政府は、2021年下半期中に「水素国家戦略2030」を策定する。水素が、アルゼンチンの経済成長を後押しする新たな資源となることが期待されている。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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