世界銀行、新型コロナ禍でも中・低所得国向け送金減少は限定的と発表

(世界)

国際経済課

2021年05月18日

世界銀行は5月12日、移民と発展に関する報告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます「Migration and Development Brief 34」PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、2020年の中・低所得国向けの送金(推計値)は前年比1.6%減の5,400億ドルだったと公表した。世界銀行は2020年10月の報告(英文外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます和文外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、中・低所得国向けの送金は7.2%減の5,080億ドルと予測していたが、減少幅を限定的にした。さらに、世界金融危機下の2009年(4.8%減)、2020年(11%減)の中・低所得国向けの海外直接投資フローの伸び率と比較しても、落ち込みは小さかった(注1)。

送金先の地域別では、伸び率が高い順に、中南米が6.5%増の1,030億ドル、南アジアが5.2%増の1,470億ドル、中東・北アフリカが2.3%増の560億ドル、東アジア・大洋州が7.9%減の1,360億ドル、欧州・中央アジアが9.7%減の560億ドル、サブサハラアフリカが12.5%減の420億ドルだった。世界の送金(受け取り)額は2.4%減の7,020億ドルだった。

送金の減少が限定的だった背景としては、景気刺激策により、(1)北米や欧州など移民受け入れ国の経済状況が2020年3、4月時点の予測に比べて良好だったこと、(2)送金手段として、現金からデジタルへのシフトと、インフォーマルなチャネルからフォーマルなチャネルへのシフトが進んだことを挙げた。また、石油価格と為替相場の周期的な動きも送金に影響を与えたという(注2)。送金チャネルについては、デジタル送金が記録に残りやすいことから、手渡しまたはその他のインフォーマルチャネルに比べて、フォーマルなチャネルでより多くの送金が記録されたと指摘している。なお、インフォーマルなチャネルを含む実際の送金規模は、正式に報告される規模よりも大きいものの、新型コロナウイルスの影響がインフォーマルなチャネルに与えた作用については不明瞭だという。

また、2021年の見通しについては、世界全体で経済活動が回復するとの見通しを踏まえ、世界の送金額は1.5%増の7,130億ドル、中・低所得国向けは2.6%増の5,530億ドルになると予測した。

(注1)中・低所得国向けの海外直接投資額のうち、中国向けを除いた場合、2020年の海外直接投資フローの伸び率は前年比30%減となる。

(注2)世界銀行によると、例えば、ロシアでは原油価格下落は経済活動や雇用水準に影響を与え、中央アジア向けの国外送金が減少する傾向がみられるという。また、原油価格下落による対ドル為替レートの変動が送金に影響を与え、ロシアの場合、米ドルに対するルーブル安により対外送金が減少した。一方、欧州からの送金受け取りは米ドルに対するユーロの上昇により増加した。

(柏瀬あすか)

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