武漢市、人材確保に向けた専門会社設立

(中国)

武漢発

2021年05月13日

中国・湖北省武漢市に人材関連サービスを提供する「武漢人材集団」が5月7日、正式に設立された。同社は武漢市政府や同市共産党委員会が設立を承認した国営企業で、主に高度人材のヘッドハンティングや人材サービス、人材アウトソーシング、職業訓練などのサービスを提供する。

設立式典では、交通銀行や中国東方航空、武漢中原電子集団、華工科技産業、武漢高徳紅外など8社が武漢人材集団との戦略的協力協定に署名した。同社の王振総経理は「年間1,000人の高度人材を武漢市に呼び込み、有名企業1,000社にサービスを提供し、人材データベースを1,000万人規模にする」と述べ、中国でもトップクラスの広範な影響力を有する人材総合サービス会社を目指すとしている。

高度人材の確保に注力するも、現場からは製造ワーカー不足の声

デジタル産業やハイテク技術産業の発展を通じて産業の高度化を進める武漢市は近年、高度人材の確保に力を入れている。市内には現在90校以上の高等教育機関(大学、短期大学、専門学校など)があり、学生数は約130万人に及ぶが、卒業生の多くが北京市や上海市、深セン市といった沿岸部の大都市に移り、若い人材の流出が続いてきた。

武漢市は2017年に「100万人の大学生の定住・創業・就職プロジェクト」を施行し、就業支援などを通じた大学卒業生の定住支援を実施。2017年から2020年までに139万人の学生が武漢に定住し、64万6,000人の学生が武漢戸籍を取得したとされている(「中国新聞」5月7日)。また、武漢市内の大学を卒業し、他都市で働いている高度人材を再び武漢に呼び戻すプロジェクトも実施している。

武漢市に進出する日系企業からは「マネジャーや技術者などの高度人材以上に、製造の現場で働くワーカーが不足している」「高度人材が給与水準を押し上げてしまい、武漢市内で人件費が上昇している」といった声も多く聞かれる。同市は、高度人材の確保のみならず、こうした進出企業の課題にも応え、ビジネス環境の整備を行っていくことが期待される。

(片小田廣大)

(中国)

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