ワーナーメディアとディスカバリーが統合、動画配信のグローバル展開を強化

(米国)

ロサンゼルス発

2021年05月20日

米国通信大手のAT&Tと米国大手メディアのディスカバリーは5月17日、AT&T傘下のワーナーメディアとディスカバリーの統合を発表した。AT&Tからワーナーメディアを分社化し、ディスカバリーと共同で新会社を設立することで合意し、両社が行ってきた動画配信サービスのグローバル展開を強化していくとしている。AT&Tは2018年に、映画配給を行うワーナーブラザースおよび有料コンテンツ配信HBOやCNNなどを傘下に持つタイムワーナーを買収し、ワーナーメディア部門としてコンテンツ事業を行ってきた。

動画配信サービス情報サイトReelgoodの調査によると、米国における5大定額制動画配信サービスを比較すると、2020年末時点での市場占有率は、ネットフリックス(Netflix)が22%、アマゾン・プライム・ビデオ(Amazon Prime Video)が20%、フールー(Hulu)が15%、HBO Maxが12%、ディズニープラス(Disney+)が6%だ。他方で、全世界での加入者数は、動画配信サービス情報サイトnScreenMediaによると、現時点で1位のNetflixが2億760万人、2位のDisney+が1億360万人に対し、ワーナーメディアが提供するHBO Maxは2,000万人、2021年1月に米国でサービスを開始したディスカバリーのディスカバリープラス(Discovery+)は1,500万人にとどまる。HBO MaxとDiscovery+の総加入者は3,500万人だが、共に定額制動画配信サービスの提供は米国のみで行っているため、世界190カ国以上で展開する競合のネットフリックスと比較すると、現状では大きな開きがある。

同発表の記者会見で、AT&Tのジョン・スタンキー最高経営責任者(CEO)は、ワーナーメディアの定額動画配信サービスHBO Maxの米国国内における成功を強調した上で、「動画配信サービス市場は急拡大しており、今後、事業のグローバル化を強化していく」とコメントし、両社の動画配信サービスについて世界の消費者に向けて展開を加速していく方針を示した。

なおAT&Tは、同社が2014年に485億ドルで買収した衛星放送企業ディレクTVの事業を2021年2月に切り離し、新会社を設立したと発表している。オンラインメディアDeadlineによると、ディレクTVの加入者数は2019年末の2,040万人から、2020年末の1年間で1,720万人へと減少していたという。

(トーレス久美子)

(米国)

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