ドイツ政府主導の鉄道サミット開催、環境に優しい鉄道の整備拡充へ合意

(ドイツ、EU)

デュッセルドルフ発

2021年05月28日

ドイツのアンドレアス・ショイアー交通・デジタルインフラ相の主導で5月17日、「ドイツや欧州の列車による環境に優しい移動」を主題にした「鉄道サミット」がオンラインで開催された。EUは持続可能な交通手段としての鉄道への切り替えを促進するため、2021年を「欧州鉄道年」としている。2050年までに気候中立を目指す「欧州グリーン・ディール」の一環として、EUは鉄道活用を支援する(2021年5月17日付地域・分析レポート参照)。

鉄道サミットでは、ドイツや欧州における気候に優しい鉄道輸送への期待を議論したほか、ドイツとチェコ、オーストリアがベルリン~ドレスデン~プラハ~ウィーン間の鉄道網強化に関する覚書(MoU)に署名した。鉄道工事の完了後は、移動時間が現在の約8時間半から約5時間、特急では約4時間に大幅に短縮され、鉄道が航空機での移動に対して競争力が強まると期待される。

また今回、多くのEU加盟国はドイツが提案した改定版「ヨーロッパ国際特急列車〔TransEuropExpress(TEE)〕2.0外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を支援するとし、同意書(LoI)に署名した。TEE2.0は、ショイアー交通相が2020年9月21日のEU運輸担当相非公式会合でコンセプトを発表したもので、気候変動の緩和を促進するため国境を越えた高速鉄道・夜行列車の整備を目指す。TEE2.0のコンセプトでは、最低3カ国を結ぶ、あるいは2カ国を結ぶ600キロ以上の路線であることや、路線の主要部分で時速160キロ以上、または総距離における平均速度が時速100キロに達することなどを定めている。2021年12月にはウィーン~ミュンヘン~パリと、チューリヒ~アムステルダムの夜行列車路線の開始を予定している。

アンゲラ・メルケル首相は鉄道サミットで「欧州の鉄道網はTEE2.0によって統一に近づいていく」とし、「ベルリン~プラハ~ウィーンのような国際的な長距離鉄道が気候保護の観点からも画期的だ」とした。

ドイツ連邦政府は鉄道輸送の拡大・近代化に向けて気候変動対策パッケージ(2019年10月1日記事参照)を通じて50億ユーロを助成する。「旅客輸送と貨物輸送の両方で電動化やデジタル化を促進する」とメルケル首相は述べた。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ、EU)

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