ルカシェンコ大統領、国家元首死亡時の権力移行に関する法令に署名

(ベラルーシ)

欧州ロシアCIS課

2021年05月14日

ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は5月9日、国家元首が暗殺やテロ、外部からの攻撃などによって死亡した場合の権力移行と国内秩序維持に関する法令に署名した。4月下旬に大統領と子息に対する暗殺計画が明らかになったことを受けて、大統領が急ぎ制定した。

法令によると、国家元首が上記の暴力行為によって殺害された際には、安全保障評議会(注)が非常事態・戒厳令を発し、移動の自由の制限、大規模イベント開催の禁止・制限、ストライキの禁止、夜間外出禁止令など国家の体制維持に必要な措置を講じる。全ての国家機関、公務員、国民は評議会の決定に従わなければならない。安全保障評議会による決定には参加メンバーの3分の2以上の合意が必要だが、大統領選挙の実施に関する審議については、同メンバーに加えて各州知事の参加を踏まえなければならないと規定している。

ルカシェンコ大統領は法令の制定に至った背景について、米国から派遣されたグループによる自身とその子息を対象とした暗殺の企てがあったことを明らかにし、「私が殺された際には安全保障評議会が権力を引き継ぎ、瞬時に非常事態体制を敷き、他国による軍事行為に備える必要がある」と述べた(大統領府4月17日、4月24日)。

法令の評価について、国立科学アカデミー社会学研究所国家管理社会学部門長のニコライ・シチェキン氏は「米国をはじめ西側諸国による政権転覆の試みがある中、ベラルーシの平和と安全を確保するために必要な措置」と指摘(ベラルーシメディア「グロドゼンスカヤ・プラウダ」5月10日)。社会政治団体ベラヤルーシのアレクサンドル・シャティコ副理事長は「この法令は、国家元首が不在となった場合でも秩序維持が可能という安心感を国民に与える。権力が移譲される安全保障評議会のメンバーはルカシェンコ大統領に対する忠誠心が高い人間で構成されており、大統領亡き後も政治政体が変わり得ないという点を反体制派に知らしめる内容だ」と述べている(ロシア国営メディア「ノーボスチ通信」5月9日)。

(注)大統領が議長を務める安全保障問題を扱う国家機関。常任委員として、首相、上院議長、下院議長、大統領府長官、安全保障評議会事務局長、内相、国防相、国家保安委員会長官が任命されているほか、最高裁判所長官、外相、中央銀行総裁、検事総長、非常事態相などもメンバーとして名を連ねる。

(齋藤寛)

(ベラルーシ)

ビジネス短信 5f66d927fe0779a8