ビングループがスマホ・テレビ生産から撤退、自動車事業を重視へ

(ベトナム)

ハノイ発

2021年05月17日

ベトナムの大手複合企業ビングループは5月9日、傘下のビンスマートがスマートフォンとテレビの開発・生産を中止すると発表した。同事業では画期的な進展が見込めないと判断した。ビンスマートは今後、自動車や住宅向けに先端技術を取り入れた製品の開発・生産に注力する。

ビンスマートは2018年6月の設立以来、「Vスマート」ブランドのスマートフォン19種類とテレビ5種類を生産してきた。スマートフォンは、60万ドン(約2,820円、1ドン=約0.0047円)の格安機種から第5世代移動通信システム(5G)対応機種まで幅広く取り扱う。2020年は国内で195万台を売り上げ、シェアは10%を上回った。受託生産では、米国向けに130万台を輸出した。既に市場に投入されているスマートフォンとテレビについては、ソフトウエアの更新をはじめ、保証や修理などのサービスを継続する。現行製品の生産が終わり次第、工場の一部は提携先への外部委託に使用され、残りは新製品の生産に合わせて拡張される計画だ。

ビンスマートは今後、同じグループ会社のビンファストの自動車向けに、車載システムの開発に注力する。自動車関連の現地調達率向上のため、電子部品やバッテリー、電動モーターなどの開発・生産も強化する。ビンファストは現在、電気自動車(EV)への参入も進めており、欧米への輸出も計画している(2021年4月2日記事参照)

また、ビングループが進める都市開発に合わせ、ビンスマートは住宅のスマート化に向けた製品開発にも継続的に取り組む。

ビングループは近年、小売り事業の売却、航空事業への参入中止など、事業再編を進めてきた。2020年の純売上高は前年比15.5%減の110兆5,000億ドン、純利益は43.0%減の4兆4,000億ドンだった。主力の不動産事業が好調を保ったが、新型コロナウイルスの影響で観光・娯楽分野などが落ち込んだ。新興の製造分野も収益を圧迫している状況で、多額の投資を伴う自動車事業を軌道に乗せられるか、今後の動向が注目される。

写真 「Vスマート」ブランドのスマートフォン(ジェトロ撮影)

「Vスマート」ブランドのスマートフォン(ジェトロ撮影)

(庄浩充)

(ベトナム)

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