重慶市、ASEANとの輸送ルート活用で域内共同発展に国際協力を呼び掛け

(中国)

成都発

2021年05月25日

中国・重慶市で5月21日から23日まで、第3回中国西部国際投資貿易商談会(注)が開催された。5月21日の開幕式では、重慶市とASEANとを結ぶ陸上輸送と海上輸送の物流ルート(以下、陸海新ルート)をテーマにフォーラムが開催され、中国やASEANなどの各国代表者が参加した(オンライン参加を含む)。フォーラムでは、重慶市、四川省、雲南省、広西チワン族自治区、ベトナム、インドネシア、ラオスなどが連名で「陸海新ルート国際協力(重慶)イニシアチブ」を発表した。陸海新ルートの沿線国・地域が協力し、貿易や投資の拡大、サプライチェーンの最適化を図り、地域経済の共同発展を目指すことを提唱した。

中国とシンガポールとの2国間合意に基づき、重慶市を基点とする陸海新ルートの構築を進めてきたシンガポール(2019年4月8日付地域・分析レポート参照)からは、情報通信相のジョセフィン・テオ氏がオンラインで参加した。テオ氏は「新型コロナウイルス感染症の拡大後、国際物流の分断や混乱が生じた中、従来の輸送ルートの代替手段として陸海新ルートの利用が広がった」と述べた。また、「陸海新ルートは輸送コストの低減をもたらすだけでなく、関係国間の協力によって貿易手続きのデジタル化や効率化が期待される」とした。

中国商務部国際貿易経済合作研究院院長の顧学明氏は、ASEANとの関係について、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の発効を契機に、陸海新ルートの活用で自動車、オートバイ、電子情報、スマートデバイスなどの分野で、中国西南地域から企業のASEANへの進出が進み、ASEANからもエレクトロニクス、軽工業、特産品などの中国市場へのアクセス機会が拡大するとの見方を示した。

拡大する重慶とASEANとの物流ネットワーク

2020年における、重慶市と広西チワン族自治区にある欽州港(ASEAN向け海上輸送の拠点の1つ)との鉄道輸送の運行本数は1,297本(前年比40.5%増)となった。輸送ルートはほかにも、重慶市から雲南省や広西チワン族自治区を経由するASEANとのトラック輸送、重慶市とハノイとの鉄道輸送があり、2020年の運行本数はそれぞれ2,821本(2.3倍)、177本(2.5倍)となった(「重慶日報」3月5日)。

ASEANは、重慶市にとって最大の貿易パートナーとなっている。重慶税関の統計によると、2020年の重慶市のASEANとの貿易額は1,122億元(約1兆9,074万円、1元=約17円)で同市の貿易総額の17.2%を占め、米国(1,077億元)、EU(1,038億元)を上回った。重慶市は2021年3月に、RCEPへの積極的な関与を図るため「ASEANとの経済貿易協力行動計画(2021~2025年)」を策定。2025年までに、ASEANとの貿易額を200億ドル超、ASEANからの直接投資額を累計で150億ドル超とすることを目指すとともに、重慶企業150社超をASEANに進出させることを目標に掲げている(「重慶日報」3月26日)。

(注)1996年から続いた「中国(重慶)国際投資・グローバル調達会」の後継イベント。2018年から現在の名称に変更された。重慶市で毎年開催される大型イベントの1つ。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止となり、今回が3回目。開会式のメインフォーラムには重慶市共産党委員会の陳敏爾書紀が出席、唐良智市長が司会を務めた。

(田中一誠)

(中国)

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