3月の生産活動と経済見通しは回復も先行きに不透明感

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年05月26日

アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は5月20日、GDPの先行指数である2021年3月の産業活動指数を発表した。前年同月比で11.4%上昇、前月比(季節調整済み)で0.2%減少した(添付資料図参照)。前年同月比では2019年7月以来のプラス、前月比では2カ月連続のマイナスとなった。生産活動の回復は足踏みが続く。

前年同月比の大幅な伸びは、2020年3月下旬から5月初旬にかけての厳しいロックダウンにより生産活動が停止した反動だ。そのため、工場の操業停止、店舗の閉鎖など、ロックダウンの影響を強く受けた製造業と商業が全体の伸び率を大きく押し上げた(添付資料表1参照)。ただし、パンデミック発生以前の2019年3月比では0.9%減少している。アルゼンチンにおける生産活動の停滞はパンデミック以前から始まっていたことであり、生産財の不足と価格上昇、外貨不足など、停滞の根本的な原因が解決されない以上、真の回復には程遠い。

前月比でのマイナスは、生産財の不足など、パンデミックによる活動制限以外に要因がありそうだ。3月下旬から1日当たりの新規感染者数が1万人を超える日が続いたが、3月中に活動規制の強化はなかった。

今後は、引き続き生産活動の緩やかな回復が見込まれている。中央銀行が5月7日に発表した、国内外の民間エコノミストへのアンケート結果に基づく最新の経済見通し(REM)によると、2021年の実質GDPの見通しは6.4%で、前月の調査から0.3ポイント減とやや下方修正された(添付資料表2参照)。

ただ、4月に1日当たりの新規感染者数が過去最高を記録し、5月に入りその記録はさらに更新されており、景気の先行きには不透明感も出てきた。4月には、ブエノスアイレス市、同州など新規感染者数が多く感染リスクの高い地域において飲食店の屋内営業を禁止するなど規制が強化され、5月22日からはさらに厳しい活動制限が導入される(2021年5月24日記事参照)。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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