アルゼンチン、感染者・死者数の急増で再び厳格なロックダウンへ

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年05月24日

アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領は5月20日夜、全国民に向けた演説で、新型コロナ感染拡大および死者数の増加を受け、現行の行動制限措置(2021年5月6日記事参照)を6月11日まで再延長することに加え、感染リスクが高い地域では5月30日まで、より厳格な行動制限措置を講じると発表した。同大統領は「(2020年3月の新型コロナウイルスの)パンデミック宣言以来、最悪の状況にある。感染者数および死者数は過去最多を記録している」と、現在の危機的状況を説明した。

5月22日に公布した必要緊急大統領令(DNU)334/2021号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによる主な措置は以下のとおり。

○現行の行動制限措置を6月11まで再延長。

○感染リスクが高いと定められた地域〔ブエノスアイレス首都圏(AMBA、注)を含む〕では、5月22日から30日まで、および6月5日から6日まで、厳格な行動制限措置を導入する。

a)対面での経済、工業、商業、サービス、文化、スポーツ、宗教、教育、観光、娯楽、社会などの活動を停止する。

b)外出は食料、医薬品、生活必需品の購入を目的とした自宅から近場のみを許可する。また、散歩や運動のレクリエーションのための外出は自宅から近場の公園などのみで許可する。

c)夜間の外出禁止時間は、午後6時から翌日午前6時までとする。

d)医療関係者やスーパーマーケット、食料品店、薬局の従業員などのエッセンシャルワーカーは行動制限の対象外で、公共交通機関の利用も可能。その他の例外業種は、生産ラインが止められない産業、デリバリー・持ち帰りのみの飲食店、バイオ燃料生産・原子力・鉱業・林業、エッセンシャル分野の自動車・バイクのメンテナンスを行う業者、輸出業者など。いずれも移動許可書の取得が必要。

また、国境封鎖措置を6月11日まで再度延長する行政決議第512/2021号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも同日公布した。同決議では引き続き、英国、ブラジル、メキシコ、チリ、インドからの航空便の停止を定めている。

フェルナンデス大統領は、これら措置によって影響を受ける国民や企業のために経済支援を拡大する目的で、5月22日に労働社会保障省決議第266/2021号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布した。同決議では、生産回復プログラム(REPRO)IIによる5月分の支援給付額を正規従業員1人当たり2万2,000ペソ(約2万6,400円、1ペソ=約1.2円)に引き上げ、対象業種をAMBAでは衣類、靴類、電子製品、ショッピングセンターなどの商業施設、自営業者にも適用するとした。

保健省によると、5月21日時点の全国の累計感染者数は約348万人、累計死者数は7万3,391人で、全国の集中治療室(ICU)の病床使用率は73.1%、AMBAでは同76.4%となっている。ICUで治療を受けている重症患者数は6,000人を超えた。またDNU334/2021号によると、ICUの重症患者数の50%以上、人工呼吸器を必要とする60歳以上の患者の約80%が死亡する深刻な状況になっている。

画像 3月6日から5月15日にかけて感染リスクの高い地域(赤色と濃い赤色)へ急激な変化(出所:アルゼンチン保健省)

3月6日から5月15日にかけて感染リスクの高い地域(赤色と濃い赤色)へ急激な変化(出所:アルゼンチン保健省)

(注)AMBAは、ブエノスアイレス市および近郊ブエノスアイレス州の35都市で構成される地域。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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