自主隔離免除国リストを公表、海外渡航解禁へ

(英国)

ロンドン発

2021年05月12日

英国のグラント・シャップス交通相は5月7日、新型コロナウイルス感染の影響によって制限している海外渡航の再開に向け、イングランドで5月17日から余暇を含む不要不急の海外渡航禁止措置を解除することを発表。併せて、入国後の自主隔離を免除する国のリスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(「緑」分類)も公表した。

感染リスクに応じて国・地域を緑、黄、赤で区分けし、異なる入国規制を設ける。各区分の概要は以下のとおり。

  • 緑:自主隔離不要。出発前72時間以内のPCRや抗原検査などの感染検査と、到着後2日目までのPCR検査受診を義務付け(ポルトガル、アイスランド、イスラエル、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールなど12カ国・地域)
  • 黄:自宅などでの10日間の自主隔離と、出発前の感染検査、到着後2日目までと8日後のPCR検査受診を義務付け。到着5日後の感染検査で陰性の場合に自主隔離を短縮できる選択肢がある(日本、中国、フランス、ドイツ、香港、イタリア、オランダ、ロシア、韓国、米国など)。
  • 赤:政府指定宿泊施設での10日間の自主隔離と、出発前検査、到着後2日目までと8日後のPCR検査受診を義務付け。自主隔離期間短縮の選択肢はなし(ブラジル、インド、フィリピン、トルコ、南アフリカ共和国など)

なお、日本からの入国に関してはこれまでと変更はない。

各区分の該当国は最新データに基づいて3週間ごとに見直す。「緑」へ昇格する候補国・地域を載せた「グリーンウォッチリスト」も設ける予定だ。「黄」と「赤」の国・地域への不要不急の渡航は引き続き避けるよう勧告する。イングランド以外では、スコットランド自治政府も17日から同様の区分と対象国・地域で渡航規制を緩和すると公表している。ウェールズと北アイルランドの両自治政府も踏襲する見込みだ。

また、2回のワクチン接種を終えたイングランド居住者は5月17日から、国営医療サービス(NHS)の感染者接触追跡アプリを利用して、自身のワクチン接種記録を取得できるようになる。

産業界は一層の緩和求める声

産業界は今回の緩和をおおむね歓迎しつつも、不満の声も聞こえる。英国商業会議所(BCC)のハンナ・エセックス理事は声明で、入国時のPCR検査費の負担軽減を政府に要望。航空事業者の業界団体エアラインズUKのティム・アルダースレイド最高経営責任者(CEO)は「機会を喪失している。渡航可能な国が少なく、名目だけの再開だ」と厳しくコメントした。EUがワクチン接種者に入域制限を撤廃する方針(2021年5月6日記事参照)を出したことを引き合いに、英国が欧州や米国など主要市場への渡航を解禁せずに遅れをとるリスクを危惧するなど、航空・旅行業界からは政府の慎重な姿勢に落胆する声が多く聞かれている。

(杉田舞希)

(英国)

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