政策金利は4%で2会合連続据え置き、インフレは一時的と判断

(メキシコ)

米州課

2021年05月25日

メキシコ中央銀行は5月13日、金融政策決定会合を開催し、政策金利を2会合連続で4.0%に据え置いた。同日のプレスリリースによると中銀は、5月7日に発表された4月の消費者物価指数は前年同月比6.08%上昇し、中銀が設定する3%±1%の年間インフレ目標を大幅に上回ったものの、コアインフレ率(注)が4.13%の上昇にとどまったことに着目(添付資料表参照)。2022年第2四半期には目標の3%に収まっていくと見通した。また、通貨メキシコ・ペソが緩やかに上昇していることや、減退している景気も2021年後半以降は回復が見込まれることなども考慮して、全会一致で据え置きを決定した。

メキシコ国立地理情報統計院(INEGI)が5月7日に発表した4月の消費者物価指数を詳しくみると、前月比では0.33%の上昇だった。うち、コアの指数は0.37%、非コアの指数は0.21%の上昇だった。一方、前年同月比でみると、全体では6.08%上昇し、うちコアの指数は4.13%で、非コアの指数は12.34%も上昇した。非コアの指数を押し上げた要因はエネルギー価格だ。4月のエネルギー価格は前年同月比で28.02%も上昇した。しかしこれは、前年同月にみられたエネルギー価格低下からの反動だ。2020年4月のエネルギー価格は前年同月比で15.36%下落しているためだ。その後、エネルギー価格は継続的かつ緩やかに上昇した。こうしたことから、中銀は、4月の前年同月比ベースでのインフレ率の高進は一時的なものだと判断したようだ。

他方、メキシコの景気回復ペースは緩慢で(添付資料図参照)、4月のインフレ率が発表されるまでは、今回の金融政策決定会合で中銀が利下げすると予測していた市場関係者も少なくなかった。しかし、ここにきて、米国でインフレ懸念が台頭し、市場では米国連邦準備制度理事会(FRB)による量的緩和の縮小予想が出始めている中、米国の長期金利は上昇傾向にある。次回のメキシコでの金融政策決定会合は6月24日だが、利下げ余地は限定されているとみられ、今後の為替とインフレの動向次第では、利上げに踏み切る可能性も否定できないだろう。

(注)天候などによる価格変動が大きい農産品、エネルギー価格、政府の方針で決定される公共料金を除いた消費者物価上昇率。

(高氏朋佳)

(メキシコ)

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