時短賃金補助制度、月の労働時間を最大80%減まで短縮可能に

(ルーマニア)

ブカレスト発

2021年04月14日

ルーマニア政府は4月5日、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けている企業への支援策として、「従業員の労働時間短縮の修正に関する法律(2021年58号)」を官報で公表した。「Kurzarbeit(短時間労働制度)」を設定する政府緊急条例(GEO 2020年132号)は2020年8月に発効し、その後多くの修正がなされたが、条文解釈が明確でないことから、導入に踏み切れない企業もあった。今回の変更で申請プロセスが簡略化されたことにより、積極的な制度活用と経営支援が期待されている。

これまで雇用主は雇用契約書で定めた月間労働時間の最大50%までしか短縮できなかったが、今回の修正により最大80%まで労働時間を短縮することが可能になった。また、時短の対象となった従業員には、雇用契約書で定めた月額基本給総額と、時短実施中に実際に受け取った総額の差額の75%を政府が補助金として給付する。この補助金は2020年8月10日以降の感染拡大防止のための行動制限措置期間中および制限解除後3カ月間が対象期間となる(注)。雇用主には時短対象となることを従業員に少なくとも5日前までに伝える義務があり、根拠ある理由がある場合は、労働組合と合意の上、従業員の労働時間を変更することができる。

ただし、雇用主は、補助金が給付される前提で、まずその補助金部分を立て替えて従業員に支払わねばならない。その支払い証明を当局に提示し、補助金を請求して受給する手順となる。補助金を含む支払済み賃金は所得税課税対象となる。

雇用主がこの制度を利用するには、以下の条件を満たさなければならない。

  • 労働時間の短縮は非常事態宣言による一時的なもの
  • 従業員総数の少なくとも10%以上の労働時間を短縮する
  • 補助金を請求する対象月の前月、または前々月の売り上げが2019年の同じ月と比べて少なくとも10%減となること
  • 時短の対象となる従業員と類似の業務を行う従業員を新たに雇用しない
  • 時短の対象となる従業員に残業、あるいはテレワークをさせない
  • 集団解雇をしない
  • 補助金請求対象期間はマネジメント層への賞与を支給しない

(注)現在も緊急事態が続き、行動制限措置が取られている。期間は5月12日までで、延長される可能性もある。

(ミンドル・ユニアナ、西澤成世)

(ルーマニア)

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