バイデン米大統領、初の施政方針演説で大きな政府を志向、共和党は反発
(米国)
ニューヨーク発
2021年04月30日
ジョー・バイデン米国大統領は4月28日、上下両院合同会議で、就任後初となる施政方針演説を行った。政権発足100日目を翌日に迎える中、新型コロナウイルス対策と経済復興での成果を強調しつつ、諸外国との競争に勝ち抜くためにインフラ刷新や社会福祉制度の拡充に投資すべきだ、と議会に呼び掛けた。共和党は、大統領の政策は党派を分断させると早くも批判している。
バイデン大統領は1時間強となった演説の冒頭で、政権発足100日以内にワクチン接種1億回としていた目標を大幅に超える2億2,000万回を達成したことや、130万人の新たな雇用を創出したことを列挙し、「米国は前進している」と成果を強調した。それに続き、中国をはじめとする諸外国との競争を引き合いに出し、米国の未来に対して一世一代の大型投資を行う必要性を説いた。
その1つが、3月末に発表した、インフラ刷新を中核とする2兆ドル超の「米国雇用計画」(2021年4月5日記事参照)だ。大統領は気候変動対策とも絡めて「風力タービンの羽根が北京で製造できてピッツバーグで製造できないわけがない」と述べ、同計画が質の高い雇用を生み出すと強調した。また、同計画に基づく投資は、バイ・アメリカンの原則に基づくとし、同原則は「いかなる貿易協定違反ともならない」とした。大統領は1月に、バイ・アメリカン政策を強化すべく、関連機関に対して180日以内に改正規則案を策定するよう指示している(2021年1月27日記事参照)。「米国雇用計画」は、財源として法人税引き上げなどが含まれていることから、既に共和党や一部の民主党議員は提案どおりの法案化に難色を示している。大統領はこの点につき「異なる考えを歓迎する」と譲歩の可能性を示唆した。
もう1つの大型投資策が、今回の演説に合わせて発表した「米国家族計画」だ。1兆8,000億ドル規模となる教育・育児向け支援の拡充策で、主に富裕層への増税を財源として見込んでいる(同計画の詳細は2021年4月30日記事参照)。
外交面では、米国が世界の舞台に戻ったとして、今後も同盟国との協力の下で米国のプレゼンスを維持することを強調した。また、中国を含めた全ての国が同じルールで競争することを確実にするとし、習近平・国家主席に対しても、同国の不公正な貿易慣行に毅然(きぜん)と対抗していくと伝えた、とした(2021年2月12日記事参照)。大統領はこのほか、警察改革や移民制度などの政策課題については、議会で審議中の法案を速やかに可決するよう呼び掛けた。
共和党を代表して反論演説に臨んだティム・スコット上院議員(サウスカロライナ州)は、大統領と民主党が「米国救済計画」(2021年3月16日記事参照)を共和党の賛同なしに成立させたことなどを挙げて、「民主党は単独で物事を進めたがっている」と批判した。大統領が焦点を当てた「米国雇用計画」と「米国家族計画」についても、「無駄に終わる大きな政府のウィッシュリストで、雇用を殺す増税を伴うもの」などと、両党の考えの違いを鮮明にした。
(磯部真一)
(米国)
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