欧州会計検査院、EV充電インフラ整備に関する報告書公表

(EU)

ブリュッセル発

2021年04月15日

欧州会計検査院(ECA)は4月13日、欧州委員会による電気自動車(EV)の充電インフラ整備の取り組みに対する監査結果と、欧州委への提言を取りまとめた報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。欧州委は2014~2020年の期間を通じて「代替燃料インフラ行動計画」(2017年)や「欧州グリーン・ディール」(2019年)をはじめとする政策文書を発表してきた。今回の報告書では、これまでの取り組みを通じて充電方式の規格の集約が進むなど、充電インフラへの利用者のアクセス改善がみられると評価しつつ、欧州グリーン・ディールで掲げた「2025年までに充電ポイントを100万カ所に拡充する」(2020年9月現在、EU27カ国で約22万カ所)という目標達成へ向けて、課題も多いと結論づけた。

課題としてECAはまず、EU加盟国間で充電設備の普及に差が大きいことを挙げた。加盟国は2014年の代替燃料インフラ指令に基づき、充電ポイント設置数の目標を設定しているが、2020年9月時点で同年の目標数に到達している加盟国は12カ国にとどまっている。また、EU域内の充電ポイントの69%がドイツ、フランス、オランダの3カ国に集中している。加盟国の充電ポイント設置を支援するEU予算として「コネクティング・ヨーロッパ・ファシリティー」(2014~2020年は交通関連予算には総額241億ユーロを配分)があるが、ECAは同予算が必要な地域に適切に分配されていないと指摘した。そのほか、充電ポイントでの決済手段が加盟国によって異なることや、急速充電が可能な充電ポイントであるかなど、利用者がリアルタイムで得られる情報が不足している点も課題として挙げている。

ECAは欧州委への提言として、(1)汎欧州運輸ネットワーク(TEN-T)計画を見直すに当たり、充電ポイントが特定地域に集中しないように地理的な条件を設けることや、決済手段など充電インフラ整備の要件を設定、(2)電動モビリティー普及に関するロードマップを策定、(3)充電ポイント設置に関するEU予算の分配とその効果について分析し、最適化を図ること、(4)EU予算を活用する場合、利用者が格差なく公平に充電ポイントにアクセスできるよう設置事業者に求めることなどを挙げ、原則として2021年中に必要な措置を講じるよう求めた。

欧州委はECAに対する回答として、提言を大筋で承諾し、2021年夏までに代替燃料インフラ拡張のための戦略的行動計画を発表するなどの対策を提示した。他方、充電インフラへのニーズは加盟国間や地域間で大きく異なることや、代替燃料の普及には水素など他の要素も考慮して「より幅広いアプローチ」が必要となるとコメントした。

写真 ブリュッセル市内の充電ポイント(ジェトロ撮影)

ブリュッセル市内の充電ポイント(ジェトロ撮影)

(安田啓)

(EU)

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