EUとアフリカ・カリブ海・太平洋諸国、新たなパートナーシップ協定の交渉妥結

(EU、アフリカ・カリブ海・太平洋諸国(ACP))

ブリュッセル発

2021年04月22日

欧州委員会は4月15日、アフリカ・カリブ海・太平洋諸国機構(OACPS)(注)と、同諸国との協力関係を定めた新たなパートナーシップ協定について、交渉を妥結したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。新協定は、既存のコトヌー協定に代わるものとして、2018年10月に交渉が開始された(2018年10月10日記事参照)。同協定は2020年2月29日に失効することが定められていたが、交渉の遅れから2度の延長を重ね、早期の妥結が望まれていた。

EU側首席交渉官である欧州委のユッタ・ウルピライネン委員(国際パートナーシップ担当)は、新協定を大きな政治的成果と評価した上で、EUとOACPS諸国との関係強化に向けた革新的な内容であり、共通の利害の下で国際社会における両者のプレゼンスを高めるものだ、と強調した。OACPS側の首席交渉官であるトーゴのロベール・ドゥセ外務・地域統合・在外国民相は、交渉の道のりは平たんではなかったとしながらも、新協定はコトヌー協定以降大きく変化した世界情勢に対応したもので、OACPS諸国の課題や期待が考慮され、さらなる関係強化に資するものと評価した。

気候変動対策に重点、地域別の議定書も新たに策定

新たな協定は、価値観や原則、重点分野を定めた「共通基盤」と、アフリカ、カリブ海、太平洋それぞれの地域特性に応じた具体的行動を定める「地域別議定書」により構成される(添付資料参照)。協定の内容は、多国間主義を原則としつつ、双方で国連加盟国の半数超を占めるという点を生かし、EUとOACPS諸国が協同することで国際社会での発言力をより強化することを目指すとしている。また、パリ協定の履行に向けて、気候変動対策に重点を置いている。環境面への考慮は経済協力分野の規定にもみられ、従来の投資環境改善の取り組みに加え、持続可能かつ責任ある投資の促進や、デジタル化などの取り組みを通じて、よりグリーンな経済への転換を目指すとしている。なお、コトヌー協定では、経済協力資金はEU加盟各国が直接拠出する欧州開発基金を通じて供与されていたが、新協定においては、「近隣諸国・開発・国際協力手段(NDICI)」を活用するとしている。また、貿易については、WTO協定との整合性の問題から、コトヌー協定以降はACP諸国を7地域に分けた地域別の経済パートナーシップ協定(EPA)の締結を目指しており、それを維持する。

新協定は、今後、欧州委の提案を受け、EU理事会(閣僚理事会)による採択と欧州議会による同意を経た後、2021年下半期の署名を見込んでいる。

(注)旧アフリカ・カリブ海・太平洋(ACP)諸国グループ。1975年のジョージタウン協定の改正に伴い、2020年4月に改組し、現在の呼称となった。

(山田泰慎)

(EU、アフリカ・カリブ海・太平洋諸国(ACP))

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