キャッシュレス決済比率が過去最高の6割に

(ロシア)

サンクトペテルブルク発

2021年04月23日

ロシアでキャッシュレス決済の利用率が拡大している。最大手行ズベルバンク傘下の分析機関ズベルインデックスは4月14日、2021年第1四半期のロシアでの支払いにおけるキャッシュレス決済(注1)の比率が過去最高の59.4%に達したと発表した(添付資料図参照)。キャッシュレス決済は2017年ごろから普及し始めていたが、「新型コロナ禍」においても利用率が着実に増加していることが明らかになった。

地域別にみると、ロシア北西連邦管区の高緯度に位置する連邦構成体で最もよく利用されている。2021年第1四半期において最も比率が高かったのはネネツ自治管区(72.8%)で、2位はカレリア共和国(67.7%)、3位はムルマンスク州(67.3%)だった。首位のネネツ自治管区では、地元政府が遠隔地における住民サービス向上を目的に2015年以降、店頭での決済端末の設置支援をはじめとする普及に努めてきた結果、自治管区内の多くの店舗がキャッシュレス対応になっている(ネネツ自治管区政府発表4月16日)。なお、サンクトペテルブルク市およびレニングラード州は64.9%で10位、モスクワ市およびモスクワ州は61.9%で24位だった。

決済手段では、カードが主流だ。決済サービス「スクレプカ」の調査によると、ロシアのスーパーマーケットでの支払い方法の55%がカードで、21%がスマートフォンをはじめとする非接触決済(注2)、24%が現金だった(「タス通信」3月25日)。

キャッシュレス決済の普及見通しについて、VISAロシアのミハイル・ベルナー決済システム部長は今後3~4年間で90%まで拡大するとし、ロシア中央銀行も3~5年で75%に達すると見込んでいる(「RBC」1月21日)。一方、決済サービス大手QIWIのアレクサンドル・アガコフ決済サービス部長は、キャッシュレス決済の普及は既にピークに達しており、これ以上の拡大には法令変更が必要となると指摘する(「実業ペテルブルク」4月16日)。

サンクトペテルブルク市内で日本などアジアの化粧品・日用品を取り扱う小売りチェーン「キミコ」の幹部は、ジェトロのインタビューに対し、「新型コロナ禍」をきっかけに店舗でのキャッシュレス決済の比率が75~80%まで高まったと回答。また、キャッシュレス決済は、来客対応の迅速化や管理負担の軽減など小売店のメリットが大きいと述べている。

写真 キャッシュレス決済端末(ジェトロ撮影)

キャッシュレス決済端末(ジェトロ撮影)

写真 店先に掲示されているキャッシュレス決済サービス一覧(ジェトロ撮影)

店先に掲示されているキャッシュレス決済サービス一覧(ジェトロ撮影)

(注1)ロシアでは一般的に、カード決済とスマートフォンをはじめとする非接触決済のことを指し、口座振替は含まないとされる。

(注2)Apple Pay、Google Payなど、カード以外のキャッシュレス決済方法を指す。

(一瀬友太)

(ロシア)

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