リブリン大統領、ネタニヤフ首相に組閣を指示

(イスラエル)

テルアビブ発

2021年04月08日

4月6日付の現地紙は、イスラエルのルーベン・リブリン大統領がリクード党首のベンヤミン・ネタニヤフ氏に組閣を指示した、と報じた。3月23日に行われたクネセト(イスラエルの国会に相当)選挙では、ネタニヤフ党首が率いるリクードが30議席を獲得して第1党になっていた(2021年3月26日記事参照)。しかしその後、ペサハ(過ぎ越しの祭り)の休暇期間を挟んで続いてきた連立工作が奏功せず、ネタニヤフ陣営、反ネタニヤフ陣営ともに過半数を確保することができない状況となっていた。

上記の現地紙によれば、どの勢力も過半数を確保できない状況で、リブリン大統領は「本来であればどの首相候補も連立政権を樹立し、組閣する資格がないが、法の定めによって誰かを指名しなければならない」と述べ、苦渋の決断だったとした。また、ネタニヤフ党首が一連の汚職疑惑で訴追され、公判中であることにも触れ、その中で指名しなければならない事態にも憂慮を示した。

4月5日の交渉期限を経て、各党が大統領に対し、首班指名について意思表明を行った。総選挙の結果、ネタニヤフ陣営はリクード(30議席)、シャス(9議席)、ユダヤ・トーラー連合(7議席)、宗教シオニズム(6議席)の計52議席を確保しており、これら各党はネタニヤフ氏を首班指名するとした。他方で、反ネタニヤフ陣営は、イェシュ・アティド(17議席)を筆頭に、青と白(8議席)、イスラエル・ベイテイヌ(7議席)、労働党(7議席)、メレツ(6議席)が計45議席を確保し、イェシュ・アティド党首のヤル・ラピッド氏を首班候補とした。去就が注目されたナフタリ・ベネット党首が率いるヤミナ(7議席)は、結果的にいずれの陣営にも属さず、単独でベネット党首を首班指名した。アラブ政党のアラブ統一リスト(6議席)、アラブリスト連合(4議席)と、総選挙前に反ネタニヤフを掲げてリクードから分離した、ギデオン・サール党首率いるニュー・ホープ(6議席)は、いずれの陣営の候補も支持しないと表明した。

今回リブリン大統領がネタニヤフ党首に組閣指示を行ったことで、今後はネタニヤフ陣営を中心とした組閣作業が始まる。しかし、同陣営は52議席しか確保できていないため、過半数となる61議席には隔たりがあり、国会承認を得られるかはまだ不透明だ。また、仮に連立工作が成功し、国会承認が得られたとしても、今後の議会運営に支障が生じる可能性がある。

(吉田暢)

(イスラエル)

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