ユーロポール、新型コロナの影響長期化による犯罪増加を懸念

(EU)

ブリュッセル発

2021年04月20日

EUの専門機関である欧州刑事警察機構(ユーロポール)は4月12日、4年に1度となる「重大かつ組織的犯罪の脅威に関する影響評価報告書(SOCTA)」2021年版を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ユーロポールによると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大が新たな組織犯罪の機会を生み出しているほか、デジタル化、グリーン・トランジション(移行)、EUを取り巻く地政学的な情勢の変化も組織犯罪発生の懸念材料となっている。

COVID-19について報告書では、まず組織犯罪への短期的な影響として、模倣品被害やサイバー犯罪の拡大を挙げた。衛生用品や医療品への需要の高まりが、正規の規格に適合しない商品や模倣品販売の急増につながった。また、感染への危機意識の高まりにつけ込み、COVID-19に関連すると偽装したドメイン名が増加し、マルウエア、ランサムウエアなどを用いたサイバー攻撃が顕著に増加したという。

長期的には、各国の制限措置により財務的に疲弊した観光業や外食産業などをターゲットにした金融詐欺やマネーロンダリングのほか、ワクチンに関連するサイバー犯罪、廃棄物管理に対する監視人員が削減された隙をついた不法投棄なども想定されると指摘した。サイバー犯罪については、パンデミックが社会の変化を加速させ、EU加盟国はデジタル化のためのインフラ整備を急ピッチで進めており、重要なデジタルインフラにもかかわらずセキュリティー対策が脆弱(ぜいじゃく)になっている場合に攻撃を受ける可能性があるとし、警戒を呼び掛けた。廃棄物管理は新型コロナの影響だけでなく、今後はグリーン化が進む中でその需要が増加すると見込まれるのに伴い、違法な廃棄物処理を事業化する組織犯罪も伸張するとの見方を示した。

中国の中東・アフリカなどEU周辺地域での影響拡大を注視

報告書では、次の5年間を見据えた重大かつ組織的な犯罪発生の潜在的要因についても分析している。中でも地政学的な要因としては、EUの対外安全保障が域内の安全確保にも影響するとし、とりわけ中国を名指ししている。中国は、中東や中央アジア、アフリカなどEUの周辺地域における貿易、インフラ整備、安全保障面での結びつきを強めており、EU・中国それぞれの犯罪組織が双方向に活動機会を広める懸念があるとした。中国以外にも、情勢が不安定で引き続き犯罪の温床となり得る周辺国・地域として、ウクライナ、領土問題が続くアルメニアとアゼルバイジャン、さらに、リビア、アフリカのサヘル地域、東地中海地域などを列挙した。

(安田啓)

(EU)

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