最高裁、医薬品などに関する特許期間延長の一時停止を発表

(ブラジル)

サンパウロ発

2021年04月12日

ブラジル連邦最高裁判所(STF)は4月7日、特許制度に関する規定を含む産業財産法に規定されている特許存続期間を変更する仮処分を発表した。今後付与される医薬品などについての特許付与時の審査遅延分の延長を一時的に停止する。

ブラジル産業財産権法第40条によれば、最大20年の特許存続期間を規定しており(注1)、その補項(注2)において、「特許は特許付与日から起算して発明特許なら10年、実用新案特許なら7年未満であってはならない」と規定している。これにより、特許審査の遅延などによって特許付与が遅れた場合でも最低10年間は特許存続期間が保障されていた。特許審査に時間を要するケースは多く、中には審査に10年以上かかることもあり、20年を超えて特許存続期間が延長されるものもあった。

このことが、「憲法第5条XXIXに規定する特許保護の一時性の原則に違反する」として、2016年から違憲立法審査が提起されており、さらに昨今のパンデミックの状況下であらためて注目される中、今回初めて司法による判断が下されることとなった。

今回の仮処分の内容は、「医薬品、製法、医療機器および/または材料における今後付与される特許のみについて特許存続期間の延長を一時的に停止する」ものであって遡及(そきゅう)的な効果はない。

4月7日付のSTFのプレスリリースによると、「パンデミックに起因する公衆衛生上の緊急事態による例外的な状況では、健康および生命を維持するための合理的かつ効果的に管理されるべき医療関連製品の不足が想定され、治療のための医薬品のみならず、さまざまな医療関連製品についての管理が必要となる」と述べた。

今後は、STF判事による全体投票が行われた後に正式決定となる。次回の審理は4月14日に予定されている。

(注1)出願日から起算して、発明特許は20年の期間、実用新案特許は15年の期間について効力を有する。

(注2)特許存続期間は、特許付与日から起算して、発明特許の場合は10年未満、実用新案特許の場合は7年未満であってはならない。ただし、ブラジル産業財産庁(INPI)が、係属中であることが確認されている訴訟、または不可抗力のために、出願の実体審査をすることができなかったときは、この限りでない。

(貝沼憲司)

(ブラジル)

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