WTOの2021年財貿易予測は前年比8%増に回復、途上国の新型コロナワクチン接種遅れ懸念

(世界)

国際経済課

2021年04月01日

WTOは3月31日、世界貿易見通し(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表し、2021年の世界の財貿易量が前年比で8%増と予測した(添付資料表参照)。世界の財貿易量の2020年実績は、WTOが同年4月に予測した12.9~31.9%減、10月時点の予測の9.2%減からさらに減少幅が縮まり、5.3%減となった。11月に新型コロナウイルスのワクチンが発表されたことによって景況感が回復したことなどが寄与したと説明した。一方、2022年の世界貿易量は増加するものの、伸び率は4%増と2021年から鈍化するとの見通しを示した。依然として新型コロナウイルス感染拡大前の水準に回復するには時間がかかるとの見解を示している。

2021年の輸入の見通しを地域別に見ると、北米が11.4%増と最も伸びが高く、次いで、欧州(8.4%増)、中南米(8.1%増)と続く。2020年後半の米国の財政支援策などが回復を後押しすると見込む。一方、アジアは輸入で5.7%増、輸出では中国を中心に8.4%増と堅調な伸びを予測している。

WTOは同予測について、短期的には下振れリスクがあり、その要因はワクチンの不十分な生産と流通、変異株などパンデミック関連に集中していると指摘。中長期的には、公的債務や財政赤字が経済成長と貿易を圧迫する可能性について言及した。WTOのンゴジ・オコンジョ・イウェアラ事務局長は「迅速なワクチンの普及が景気回復にとって最良の刺激策だ」と述べ、途上国で遅れているワクチン接種や地域間の格差の影響が世界貿易回復の脅威と指摘している。

(伊尾木智子)

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