IMFが中東・北アフリカ地域の2021年の経済成長予測を引き上げも、各国で開き

(中東)

中東アフリカ課

2021年04月08日

IMFは、4月6日に発表した「世界経済見通し外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」において、中東・北アフリカ(MENA)地域の2020年の実質GDP成長率はマイナス3.4%、2021年は4.0%、2022年は3.7%とした(添付資料表参照)。前回(2021年1月時点)の予測値から、2021年は0.9ポイントの上方修正、2022年は0.5ポイントの下方修正となった。

IMFでは、2021年を新型コロナウイルスの打撃からの復興の年とし、世界全体の成長予測を6.0%としたが、まだ見通しは不確実で、ワクチンの普及状況や政府の施策、金融環境の動向などに応じて、国ごとに経済回復の道のりに差が出る見込みとしている。

中東地域の成長予測でも、新型コロナウイルスの感染拡大、ワクチンの供給、観光への依存度、原油価格の動向、政策の実施などの状況に応じて、各国間で大きな違いが出る可能性があるとしている。ワクチン接種を早期に開始し、新型コロナウイルスの感染抑制に成功する国(イスラエルなど)は比較的良好な見通しが期待できるが、一部の経済危機にあえぐ国や紛争が続く国(レバノン、イラクなど)の見通しは明るくないとする。

国別に統計をみると、パンデミックと原油価格下落の影響を受けた2020年は、各国ともほぼ軒並みマイナス成長だった中で、エジプト、トルコ、イランはプラス成長になった。2021年以降は、全ての国がプラス成長に転じる見込みとしているが、イスラエルの5.0%の成長予測に対して、イラクは1.1%などと開きがある。

中東・北アフリカ地域の消費者物価(年平均)上昇率は、2020年(10.6%)に続き、2021年も12.4%と高くなっている。引き続き米国制裁の影響を受けるイラン(39.0%)や、通貨リラ安に苦しむトルコ(13.6%)が特に高い上昇率を示している。

中東・北アフリカ地域の経常収支(GDP比)は、2020年のマイナス3.2%から、2021年には0.7%のプラスに転じるとしている。各国とも2021年はおおむね改善する見込みだが、特にシリア難民の流入による公共サービスの負担増に苦しむヨルダン(マイナス8.3%)、対外債務問題を抱えるオマーン(マイナス6.4%)などの赤字を予測している。

(米倉大輔)

(中東)

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